
学校に行けなかった経験から、見つけたものは――。
不登校を経験した全国の若者によるショート動画のコンテスト「不登校生動画甲子園2025」の表彰式が24日、横浜市中区の市開港記念会館であった。
400本超の応募作品があり、最優秀作品賞にはいじめを受けて不登校になり、絵を描くことを通じて自信をつかんだ新潟県の中学3年、「ひな」さん(15)の動画が選ばれた。
コンテストは動画投稿サイト「TikTok(ティックトック)」などの主催で、今回で3回目。不登校経験がある13~19歳の個人・グループが「不登校で見つけたこと」をテーマに1分以内の動画を投稿し、日本文学研究者のロバート・キャンベルさん、不登校ジャーナリストの石井しこうさんらが審査した。
表彰式では応募作品432本から絞り込まれた8本の動画を上映。ファイナリストが動画に込めた思いを「周りと違うことは恥じることじゃない」「不登校になって見つけたものはまだありません。でも、生きる理由を見つけたい」などとスピーチした。
最優秀作品賞を受賞したひなさんは、小学生のころに容姿に関する悪口を言われ、教員にも見て見ぬふりをされたという。ベッドから起きることができず、スマートフォンで動画を見続けるなどつらい経験を重ねたが、大好きな絵に救われたという。
動画ではカットをテンポ良く切り替え、「何げない一言で人は飛び降りるかもしれない」「逃げ道を作った。幸せになれるように」といったセリフを重ねた。
ひなさんは受賞後に「逃げていいんだ、というメッセージを伝えたい。逃げることにはマイナスイメージがあるかもしれないが、人生の一部だし、やがて楽になる」と話した。
キャンベルさんは「完成度が高く、小説の原作のよう。自分も励まされる動画でした」と評価した。
コンテストでは今回から、不登校の当事者や保護者も審査に参加した。高校2年の長女(17)が中学時代に不登校を経験したという東京都内の女性会社員(44)は「不登校になって良かった側面に目が向きがちだが、もがき、苦しむのも実態だ。そうしたことを動画にするには勇気が必要だったと思うが、多くの人に見て知ってもらえれば」と話した。【斎藤文太郎】