
トランプ米政権の経済閣僚トップであるベッセント財務長官と、トランプ大統領の側近である実業家のイーロン・マスク氏が、省庁人事を巡り怒鳴り合いの口論をしたと、米ニュースサイト「アクシオス」が23日、関係者の証言を基に報じた。トランプ氏の権力を盾に政府効率化省(DOGE)を率いて権勢を振るうマスク氏に対し、政権内で風当たりが強くなっている。
報道によると、騒動が起きたのは17日のホワイトハウス内。前日に日本の国税庁に当たる内国歳入庁(IRS)の長官代理にマスク氏が推す人物が就任したことに、ベッセント氏が不満を爆発させ、自らが推薦する人物と交代させるよう求めた。IRSはベッセント氏の所管官庁であるにもかかわらず、マスク氏がベッセント氏の知らないところで勝手に人事を進めたことに我慢ならなかったとみられる。
口論で、ベッセント氏は、マスク氏が当初約束したほどDOGEが予算を削減できていないと批判。これに対し、マスク氏はヘッジファンド出身のベッセント氏を「失敗したヘッジファンド運営者」と罵倒した。口論があまりに過熱したため関係者が仲裁に入り2人を引き離したという。
ベッセント氏は温厚な人柄で知られており、怒りをあらわにするのは珍しい。騒動後には結局、ベッセント氏の推す人物がIRS長官代理に新たに就任。人事決定権を持つトランプ氏は、マスク氏ではなくベッセント氏の言い分を聞き入れたことになる。
マスク氏は今月上旬、トランプ政権で関税政策を主導するナバロ大統領上級顧問(貿易・製造業担当)に対しても「本当にバカだ」とX(ツイッター)に投稿。前日にナバロ氏が、電気自動車メーカーのテスラを経営するマスク氏について、車体を組み立てるだけの「組み立て屋」と皮肉ったことに腹を立てたとみられる。
アクシオスによると、トランプ政権のキーマンを公然と批判するマスク氏について、ホワイトハウスからは「やり過ぎだ」(高官)との声が上がっているという。【ワシントン大久保渉】