
埼玉県戸田市の首都高速道路で2024年5月、大型トラックが車に追突し6人が死傷した事故で、トラックの運行の安全対策を怠ったとして、警視庁交通捜査課は9日、運送会社「マルハリ」(札幌市東区)の運行管理者だった元社長の男性(48)=北海道石狩市=を業務上過失致死傷容疑で書類送検した。起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。
交通事故を起こした運転手が勤務する会社の運行管理者を同容疑で立件するのは異例。過去には、16年に長野県軽井沢町で大学生ら15人が死亡、26人が重軽傷を負ったスキーバス事故がある。
事故は24年5月14日午前7時35分ごろ、美女木ジャンクション(JCT)付近の首都高5号池袋線下りで発生。降籏紗京被告(29)=自動車運転処罰法違反(過失致死傷)で起訴=が運転する大型トラックが、渋滞で停車中の車に追突して、トラック3台と乗用車3台を巻き込む玉突き事故になり、3人が死亡、3人が重軽傷を負った。
書類送検容疑は、事故前日の5月13日、降籏被告が体調不良を訴えたにもかかわらず、運行前の点呼をせず、代わりの運転手を手配しないなど必要な対策を怠り、事故で6人を死傷させたとしている。元社長は「会社の売り上げを重視し、安全対策を後回しにしてしまった」と容疑を認めているという。
警視庁によると、降籏被告は事故の3日前から38度台の高熱を出し、前日には元社長に対面で体調不良を報告した。実際は代わりの運転手の確保は可能だったが、元社長は手配しようとしなかった。
また、同社は点呼を日常的に実施していなかった。警視庁が100回分の点呼状況を調べたところ12回で未実施だった。7日間の業務時間が144時間を超える運転手もいたほか、輸送ルートや休憩時間を示す「運行指示書」の作成をしていないこともあったという。
事故で家族を失った遺族は9日、東京都内で記者会見を開いた。夫の杉平裕紀さん(当時42歳)を亡くした智里さんは「大型トラックを扱う運送会社としてあまりにも何もしていない」と会社側を批判。夫の船本宏史さん(当時54歳)を亡くした恵津子さんは、「『会社側が悪かった』のではなく、運転手も眠気を感じながら運転を続けていたとされる。同じような事故が起きないように、運転手にはより重い危険運転致死傷が適用されてほしい」と要望した。【菅野蘭】