
東海沖から九州沖を震源域とする「南海トラフ巨大地震」について、国の有識者会議は31日、最悪の場合は直接死が29万8000人、全壊・焼失建物が235万棟に上るとする新たな被害想定を公表した。発災時の市民生活や企業活動の継続に不可欠なインフラ企業はどう対応するのか。
中部電力は地震の想定震源域に立地する浜岡原発(静岡県御前崎市)の防潮堤を2012年に内閣府が公表した津波想定を基に海抜22メートルにかさ上げした。24年には独自の試算で津波の最高水位を25・2メートルと想定し、さらに28メートルまでかさ上げする計画だ。
東海地方は南海トラフ巨大地震で大きな被害が想定されるが、発災後も電力供給できるよう発電施設の耐震工事や浸水対策もしている。24年8月の南海トラフ地震臨時情報発表後には、初動対応の迅速化のため社員への指示などを自動的に出す運用に改めた。
石油業界は11年の東日本大震災以降、災害時のインフラ強化を進めてきた。通常、灯油やガソリンは製油所や油槽所からタンクローリーでガソリンスタンドなどに運ぶが、災害時は道路状況の悪化などで避難所や病院などに届けにくいという課題があった。
石油元売り各社は全ての製油、輸送基地に輸送用のドラム缶を配備したほか、衛星電話や非常用発電機の設置を進めてきた。南海トラフ地震の被害想定区域での対策は19年度に完了した。
出光興産では東西に長い震源域の片側で大地震が起こる「半割れ」のケースも想定した防災訓練なども実施している。
大阪ガスは津波による浸水が想定される区域で都市ガスの供給を停止するシステムを構築。また、1995年の阪神大震災以降、ガスの供給停止の影響を最小限に抑えるため55だった供給エリアを727まで細分化した。【高田奈実】