
大阪・関西万博(4月13日開幕)で、大屋根「リング」と並ぶ会場のシンボル「静けさの森」にはコンピューターを活用して木陰が増えるよう樹木を配置するなど、熱中症を防ぐ設計が随所に施されている。大阪市内は2024年5月初めには熱中症患者が搬送されており、万博開幕後、森の力が試されそうだ。
静けさの森は、海外パビリオンがひしめくリング内側のほぼ中央にあり、広さは阪神甲子園球場の半分強の約2・3ヘクタール。クヌギ、コナラなど日本の里山を彩る樹木計約1500本が植えられた。1970年の大阪万博が開かれた万博記念公園(吹田市)の樹木も移植され、過去とのつながりも意識している。
その大阪万博から暑さは格段に厳しくなった。当時、府内の猛暑日は年間6日だったが、24年は41日と7倍近くに増えた。府内で熱中症で搬送されたのは24年5~9月に7253人と東京都に次いで多かった。
静けさの森は暑さを意識して設計された。実際に森に入ると木陰の多さに気付く。「陰の量が多くなるようにコンピューターでシミュレーションして、樹木の最適な配置を決めているんです」。「森」の設計に携わった日建設計のランドスケープ設計者、岩田友紀さん(37)は説明する。
事前に樹木の高さや幅、幹の太さなどの情報をリスト化。人の通り道に陰ができるようコンピューターにより最適解を導き出して木を植えた。ランダムに植樹した場合と比べると、陰の面積は2割ほど多いという。
さらに、直径20メートルの池や、浅く水を張ったブーメラン状の水盤3カ所にも暑さを和らげる“秘策”がある。水面で冷やされた空気が涼風となって森を吹き抜け、会場内に流れる仕組みだ。夏にはセミやトンボが姿を見せる「森」は“自然のエアコン”ともなっている。【村上正、藤河匠】