
石破茂首相は、戦後80年談話を出す検討に入った。2015年8月、当時の安倍晋三元首相が戦後70年談話を出して以降、ロシアによるウクライナ侵攻などで国際情勢が変化していることを踏まえ、先の大戦を検証したうえで戦後の日本の平和国家としての歩みを改めて国内外に示す意義は小さくないと判断したとみられる。政府関係者が28日、明らかにした。
首相は27日までに複数の官邸幹部と戦後80年談話に向けた検討議論を開始。過去の首相談話が終戦記念日の8月15日当日やその前日に閣議決定されていることを踏まえ、談話を出す時期などを巡って協議した。有識者会議の設置についても今後検討する。
首相は1月21日の毎日新聞のインタビューで、戦後80年談話を出すかどうかについて「今までの経緯も踏まえながら適切に判断したい」と述べたうえで、石破内閣の歴史認識に関しては歴代内閣の方針を基本的に引き継ぐ考えを表明。同31日の衆院予算委員会では「なぜあの戦争を始めたのか、なぜ避けることができなかったのか。検証するのは80年の今年が極めて大事だ」と述べ、第二次世界大戦の検証に意欲を示していた。
与党内では被爆地・広島県選出の公明党の斉藤鉄夫代表が「談話は出すべきだ」との考えを示す一方で、自民党の小林鷹之元経済安全保障担当相が「出す必要は全くない。そのための70年談話だ」と述べるなど、党内の保守派は新たな談話に反対している。
安倍氏は15年8月、戦時中の日本の行いについて「痛切な反省と心からのおわび」に言及するとともに、「先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と指摘する戦後70年談話を閣議決定した。戦後60年の05年には小泉純一郎首相談話、戦後50年の1995年には村山富市首相談話が出されている。【鈴木悟】