ロシアのプーチン大統領は19日、「核抑止力の国家政策指針」(核ドクトリン)を改定する大統領令に署名した。非核保有国によるロシア領内への侵略であっても「核保有国の支援があれば共同攻撃とみなす」とし、核兵器での反撃を検討する内容が新たに盛り込まれた。米国がウクライナに供与した長射程ミサイルで露領内を攻撃することを許可したと報じられたことへの対抗措置とみられ、緊張激化は必至だ。
改定された核ドクトリンでは、核兵器使用が検討される条件として「戦略航空機や巡航ミサイルなどの航空・宇宙兵器が大規模に発射され、露国境を越えたとする信頼できる情報があった場合」などと新たに定め、通常兵器による攻撃であってもロシアの主権が重大な危機に陥った場合、条件に該当するとしている。プーチン氏は9月下旬の安全保障会議で改定案を公表しており、「ロシアに対する軍事的脅威とリスクに見合ったものだ」と強調。ただ、改定時期については明らかにしていなかった。
欧米メディアによると、バイデン米大統領はウクライナに対して供与した射程300キロの米国製地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」の使用を許可したとされ、ウクライナ軍が8月初旬から越境攻撃を続けている露西部クルスク州で使用される可能性が高いとしている。クルスク州では露軍が反撃を強めており、1万人以上の北朝鮮兵が派遣されたとみられている。ウクライナ側は数日以内にも長距離攻撃を始めるとも報じられており、プーチン氏はこれらの状況を鑑み、核ドクトリンの改定に踏み切ったとみられる。
プーチン氏はこれまで一貫して、欧米に対しウクライナに長射程ミサイルの使用を許可しないよう求めてきた。9月には露メディアの取材に対して、欧米が長射程ミサイルの使用を容認することは、「NATO(北大西洋条約機構)諸国がウクライナの戦争に直接参加することにほかならない」と指摘し、紛争の本質を大きく変えることになると強調。「我々に降りかかる脅威に対して、しかるべき決定を下すだろう」とけん制していた。【モスクワ山衛守剛】