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兵庫知事選 斎藤元彦氏を支えたユーチューブ「勝手連」の援護射撃


2023年10月に行われた兵庫県知事選挙では、斎藤元彦氏がSNSを駆使する選挙戦術で当選を果たしました。斎藤氏のSNSフォロワー数は対抗馬の稲村和美氏を大きく上回り、その影響で彼のメッセージはより多くの人々に届きました。特に「公式応援」アカウントによる拡散や、立花孝志氏を始めとする外部の支援が大いに寄与しました。報告書によれば、ネットでの情報発信がマスメディアに対抗する形で効果を発揮し、多くの視聴者に影響を与えました。SNSを利用した情報伝達の信頼性が増す中、選挙の多様化が進んでいることが示されています。

 17日に投開票された兵庫県知事選は、斎藤元彦氏(47)が、インターネットの後押しを得て知事に返り咲いた。

 ネットを使った選挙に詳しいネットコミュニケーション研究所の中村佳美代表は、斎藤氏や陣営以外からの「援護射撃」が大きな影響を与えたと指摘する。

フォロワー数は稲村氏の10倍以上

 研究所は、知事選について、斎藤氏や前同県尼崎市長の稲村和美氏(52)を中心に、インスタグラムやユーチューブの投稿の拡散状況などSNS(ネット交流サービス)上の動きを分析、報告書にまとめた。

 報告書によると、両者のインスタグラムとX(ツイッター)の公式アカウントのフォロワー数、ユーチューブのチャンネル登録者数は、斎藤氏がいずれも稲村氏を10倍以上、上回った。

 例えば、斎藤氏のXのフォロワー数は、出直し選への出馬を表明した9月末時点では7万ほどだったが、10月31日の告示後に急増。投開票日には19万超となった。これに対し、稲村氏のフォロワー数は1万5000にとどまる。

 Xの投稿の拡散では、斎藤氏の後援会など「公式応援」アカウントが大きく寄与した。リポスト(再投稿)の数は、本人アカウントの2倍超となった。投稿の表示回数では、斎藤氏は本人と公式応援アカウントを合わせて計9250万回で、稲村氏の約4・2倍になった。

陣営外の支援チャンネル

 一方で、中村代表が「これまでの選挙には見られなかった特徴」として挙げるのが、ユーチューブだ。

 候補者本人の公式チャンネルでは、60秒以内のショート動画を含む動画(ライブ配信除く)の合計視聴数は、投稿が多かった稲村氏が斎藤氏をわずかにリードした。

 ただ、投票行動に影響を与えたのは、これ以外の動画の影響がより大きかったとみられる。

 告示日以降の視聴数では、斎藤氏本人のチャンネルは計119万回。公式の応援チャンネルはこの約2倍の254万回だった。

 これに対し、自ら出馬しながらも斎藤氏の応援を表明した政治団体「NHKから国民を守る党」党首で元参院議員の立花孝志氏(57)は100本以上の動画を投稿し、合計視聴数は計1499万回に上った。さらに、これらの切り抜き動画を配信するチャンネルも計1299万回再生された。

 いずれも斎藤氏本人の10倍超となる再生回数だ。

 他にも、インターネット番組「虎ノ門ニュース」が554万回、財務省OBで嘉悦大教授の高橋洋一氏も201万回で、注目を集めた。ゲーム配信やガーデニングを主に扱っていたチャンネルが斎藤氏に関して投稿するケースも複数あった。

 「これまでは候補者がメインで発信してきたが、今回は候補者や陣営よりも発信力が大きい著名人や個人による『援護射撃』の追い風が大きかった」。中村代表は、斎藤氏の返り咲きの一因をこう分析する。

 立花氏は、斎藤氏を告発した元県職員にまつわる情報などを発信し、斎藤氏のパワハラ疑惑を否定する主張を繰り返した。報告書は「自身の強力な発信力を生かし『デマを流すマスメディアvs真実を伝えるネット』という対立構図を積極的に訴えて、大きなうねりを作り出した」と総括した。

 中村代表は「テレビや新聞よりもSNSへの接触の方が多くなり、マスメディアへの信頼が低下する中、ネットの方に信頼性があると感じる人が多くなっている可能性がある」と話す。

 斎藤氏の街頭演説に多くの聴衆が集まったことなどから「SNSを見て現場に足を運んだ人は多かったようで、投票行動に与える影響も大きくなっている。選挙のあり方が変わってきた」と中村代表は言う。

 そのうえで「主張の根拠をつけて発信したり『ファクトチェック』をしたりする重要性がより増してくるだろう」と指摘している。【岡田英】

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