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「人災だった」裁判長の厳しい言葉 遺族は涙 那須雪崩事故


 「自然災害ではなく被告らによる人災で起きた事故だと示された」。栃木県那須町で2017年3月に起きた雪崩事故を巡り、業務上過失致死傷罪に問われた教諭ら3被告に実刑判決を言い渡した30日の宇都宮地裁判決。傍聴した遺族らは「学校安全に警鐘を鳴らす画期的な判決だ」と評価し、控訴しないよう求めた。

 高校生ら8人が雪山で命を落とした惨劇から7年あまり。公判は1年半以上、18回に及んだ。遺族らは毎回のように法廷へ足を運び、裁判に耳を傾けてきた。この日、開廷前には50席の傍聴券を求めて市民ら306人が長い列を作った。3被告はスーツ姿で、入廷時には遺族側に一礼して着席した。

 1時間半に上った判決公判の中で、犠牲になった県立大田原高の生徒らの名前が読み上げられると、傍聴席の遺族らはハンカチで目を拭い、すすり泣く声も聞こえた。滝岡俊文裁判長は判決理由で「相当に重い不注意による人災だった」と厳しい言葉で指摘。3被告は判決後、報道陣を避けるように無言で車に乗り込んだ。

「ささやかな一生の幸せ、消えてなくなった」

 「裁判長から『人災』という言葉が出てきて、すごく感動した。今後、このような事故が起こらないようにしてほしい」。判決後に宇都宮市内で開かれた記者会見には、事故で亡くなった生徒ら4人の遺族が出席し、待ち望んだ判決への思いを語った。佐藤宏祐さん(当時16歳)を亡くした父政充さん(55)は、被害者の追悼式に被告らがずっと欠席していることに触れ「罪を認め、真の意味での謝罪をしてほしい」と述べた。

 高瀬淳生さん(当時16歳)を失った母晶子さん(57)は「判決が出るまで毎晩、寝付けなかった。裁判所が下した決断を真摯(しんし)に受け止め、控訴することなく刑に服してもらいたい」と涙を拭った。山岳部の第3顧問だった教諭の毛塚優甫さん(当時29歳)の父辰幸さん(72)は「量刑は非を自覚して反省するためのものだ。あの日から息子とは会えず、ささやかな一生の幸せは消えてなくなった。そのことを3人は分かってほしい」と訴えた。

 同席した遺族側の石田弘太郎弁護士は「判決では、故意ではないが相当重大な過失だと書いてくれた。量刑としては妥当だと思う」と判決を評価した。

 登山講習会で起きた事故を巡っては、部活動のあり方についても議論の対象になってきた。奥公輝さん(当時16歳)の父勝さん(52)は「この事故は学校安全の教訓とならなければならないと訴えてきた。学校安全に関わる画期的な判決だ」と歓迎。一方で「事故をもって部活動に反対だというわけではない。安全を確保して盛んにやってほしい。中止の基準なくやることはやめてほしい」との考えを示した。また判決を受け「(裁判中は)思い出に浸ることができなかった。これを一つの区切りとして息子の冥福を純粋に祈りたい」と話した。

 県高体連の大牧稔会長は「二度とこのような痛ましい事故を引き起こすことなく高校生のスポーツ活動が安全を最優先に行われるよう再発防止や安全対策の徹底に取り組みたい」とのコメントを出した。【藤田祐子、今里茉莉奈、有田浩子】

栃木県教委の反省と再発防止策は

 教育活動の一環で行われた登山中に起きた雪崩事故を受け、栃木県教育委員会は反省と再発防止策をまとめ、今年3月に公表した。教育現場を監督する組織として危機管理意識の欠如があったと認め、現場の教諭だけに判断を委ねず「組織全体で生徒らの安全の確保に取り組む」としている。

 雪崩事故は、栃木県高校体育連盟(県高体連)主催の「春山安全登山講習会」で起きた。県教委がまとめた文書によると、教育活動で登山を行う場合、地元の山岳関係者の審査を経て県教委が計画を承認するプロセスが取られてきたが、この講習会は県高体連主催との理由で審査を経ていなかった。また、生徒を派遣する学校側も活動計画や危機管理体制を十分に把握できておらず、実施するか中止かの判断を現場に委ねた。

 こうした反省を踏まえ、県教委は「活動の是非を組織的に判断できるよう、指導が必要だった」と責任を認め、再発防止に向けた仕組みづくりを進めている。降雪や天候悪化の際に安全をどう確保するかを計画に細かく盛り込み、引率する教諭は経験や勘に頼らず計画に基づいて判断する運用を徹底している。

 雪崩事故を巡っては、一部の遺族が損害賠償を求めた民事訴訟で、昨年6月に宇都宮地裁が県や県高体連に計約2億9000万円の支払いを命令。判決は「雪崩の発生を予見し、講習会を中止すべき義務があったのに怠った」と認定し、双方が控訴せず確定した。【池田一生】

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