栃木県那須町の茶臼岳で2017年3月、部活動で登山講習会に参加していた県立大田原高の生徒ら8人が雪崩に巻き込まれて死亡した事故で、業務上過失致死傷罪に問われた教諭と元教諭の3被告に対し、宇都宮地裁は30日、いずれも禁錮2年の実刑判決を言い渡した。滝岡俊文裁判長は「雪崩が自然現象という特質を踏まえても、重い不注意による人災だった」と述べた。
起訴されたのは講習会の現場責任者だった猪瀬修一被告(57)と、生徒を引率していた菅又久雄被告(55)と渡辺浩典被告(61)。いずれも検察側は禁錮4年を求刑し、弁護側は無罪を主張していた。
起訴状などによると、3被告は17年3月27日朝、前日からの降雪などで雪崩が発生する危険性が高まっていたにもかかわらず、安全確認や事前の情報収集を怠ったまま講習会の実施を決定。雪中の歩行訓練をしていた午前8時半ごろに発生した雪崩により、生徒7人と教諭1人を死亡させ、生徒5人にけがをさせたとしている。
雪崩発生の予見可能性などが主な争点だった。判決は、猪瀬被告が雪崩に関する知識を持ち危険性を認識できたと指摘した。菅又、渡辺両被告は補佐する立場だったが、猪瀬被告とともに危険の回避措置を講じなかったとした。
これまでの公判では、検察側が「大量降雪や急斜面の危険性を検討せず、漫然と訓練を行った過失は重大」などと指摘。弁護側は「雪崩の発生は予見できず、3人の行為と事故に因果関係はない」と無罪を主張した。現場周辺の積雪についても「30センチはあった」とする検察側に対し、弁護側が「15センチ程度との認識だった」と反論していた。被害者参加制度を利用した遺族が意見陳述し「重い処罰」を求めるなどした。
一部遺族が栃木県などに損害賠償を求めた訴訟では、宇都宮地裁が23年6月、講習会を主催した県高校体育連盟(県高体連)と3被告の過失を認定。県と県高体連に計約2億9270万円の賠償を命じた判決が確定している。【池田一生】