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娘の命奪った8.8秒間の脇見運転 事故から2年、父が伝えたいこと


 「春は、私たちにとって悲しく、つらい季節です」――。

 名古屋市瑞穂区で2022年3月、下校中の女子児童2人が車にはねられ死傷した事故は今月24日で発生から2年が経過した。亡くなった小学3年の女児(当時9歳)の父親が今の心境をつづった手記を報道機関に寄せた。

 手記ではお寺から三回忌法要の案内が届いたことに触れ、「心の整理がつかぬまま、時が過ぎていくことに、やるせなさを覚えます」と苦しい胸の内を吐露。夢にいつも出てくる娘はマスク姿で泣いて見つめてくるといい、「その無言の訴えが、私の心を締め付けます。どうしたら娘の笑顔を取り戻せるのか」と悩みを打ち明ける。

 22年11月の名古屋地裁判決は、運転手が切った爪をゴミ箱に捨てることに気をとられ約8・8秒間にわたって脇見運転をしたと認定した。父親は手記で「8・8秒間の脇見が、娘の『行ってきます』を永遠の別れに変えました。『ただいま』という娘の声をもう一度聞くことができたら、どんなに幸せか」、「交通事故は、あまりにも容易に、かけがえのない『日常』を奪ってしまいます。交通ルールを守り、人を思いやり、正しい行動ができる社会になることを心から願っています」と訴える。

 事故は22年3月24日に発生。修了式を終えて下校中の女児2人が青信号で横断歩道を渡っていた際、乗用車にはねられ、1人が死亡、1人が重傷を負った。運転手は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)に問われ、禁錮5年の判決が確定した。亡くなった女児の両親は事故から1年となった昨年、女児がよく遊んでいた公園の一角に、子どもたちの安全を願い、歌をうたう3人の子どもと2羽の小鳥をかたどった石のモニュメントを建てた。【山下俊輔】

 手記の全文は次のとおり。

    ◇    

 春は、私たちにとって悲しく、つらい季節です。

 2022年3月24日の小学校修了式、娘は通学路を帰宅途中、青信号で横断歩道を渡っている時に交通事故に遭い、幼くしてこの世を去りました。私たちは娘との最期の言葉さえ交わすことができませんでした。

 モニュメントの寄贈から1年がたちました。四季折々の花や木の実の贈り物に囲まれ、モニュメントの子供たちは、まるで天からの使者のように、いつ訪れても私たちを温かく迎えてくれます。地域の人々が、まるで娘がまだそこにいるかのように、優しく声をかけ、見守ってくれることに心から感謝しています。

 先日、お寺から三回忌法要のお便りをいただきました。心の整理がつかぬまま、時が過ぎていくことに、やるせなさを覚えます。娘を想(おも)いながら作る御膳や読経をあげる日々。色とりどりの献立を並べても、唱える読経を増やしても、喪失感は深まるばかりです。

 夢に現れる娘はいつも一人でマスクをし、泣いて私を見つめます。その無言の訴えが、私の心を締め付けます。どうしたら娘の笑顔を取り戻せるのか。

 あの日以来、私たちの生活は一変しました。悲しみや不安を抱え、日常を送るには、医療機関の支えが必要になりました。また、人とのコミュニケーションが難しくなり、思考力や判断力も著しく低下しました。このもどかしい日々はいつまで続くのか。

 娘を奪った脇見運転の事故に対する怒りは、時と共に増すばかりです。

 「前を見ていなかった」「スマホは触っていない」「わざとではない」と述べた犯人の8・8秒間の脇見が、娘の「行ってきます」を永遠の別れに変えました。「ただいま」という娘の声をもう一度聞くことができたら、どんなに幸せか。交通事故は、あまりにも容易に、かけがえのない「日常」を奪ってしまいます。交通ルールを守り、人を思いやり、正しい行動ができる社会になることを心から願っています。この地域で二度と悲しい事故が起こらないように、切に願っています。

 私たちが失った日常は、もう戻ることはありません。つらいながらも、「娘を想う時間」を大切にし、静かに時を過ごすことが、今の私たちにできる最善の生き方だと考えています。

     娘を想う父

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