米国の東部メリーランド州ボルティモアで現地時間26日午前1時半ごろ、全長約2・5キロ（4車線）のフランシス・スコット・キー橋が大型コンテナ船（全長約300メートル）の衝突で崩落した。米メディアの報道によると、橋で補修工事をしていた少なくとも6人の作業員が行方不明となっている。何らかの原因で船が電源を失い、操縦不能になったとみられる。
コンテナ船はデンマークの海運会社「マースク」がチャーターした「ダリ号」。ボルティモア港を午前1時ごろに出発後しばらくして、パタプスコ川の河口付近に架かる橋の橋脚に衝突した。顧客の荷物を積み、スリランカに向かう予定だったという。
事故直前、州当局にはダリ号から「電源を失った」などと緊急連絡が入っていた。州当局は、電源喪失で操縦不能になったことが原因で、テロなど意図的な衝突ではないとの見方を示している。
事故当時、橋の上では複数の作業員が橋の補修作業をしており川に転落したとみられる。消防により2人が救出された。6人が行方不明となったものの、沿岸警備隊などは「生存の可能性は低い」として26日夕に捜索を打ち切った。ダリ号の乗組員にけがはなかった。
この橋は1日3万人以上が利用しているが、事故直前に船からの緊急連絡があり、州当局が急きょ橋の両端で通行を止めていた。ただ、X（ツイッター）などに投稿された動画では、橋の崩落数秒前に1台の車がギリギリで通過していた。ボルティモアのスコット市長は記者会見で「あんなふうに崩落するのを見るとは考えもしなかった。まるで映画のようだ」と述べた。
現場は首都ワシントン中心部から北東約60キロに位置する。ボルティモアはメリーランド州の最大都市で、市内の国際港には多くの貨物船が入港する。州によるとボルティモア港の2023年の国際貨物取扱額は808億ドル（約12兆円）で全米9位。自動車などの取り扱いが多く、米国内のサプライチェーン（供給網）に影響が出る可能性もある。【ワシントン大久保渉】
