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「高校生の学び、支えたい」 能登地震で犠牲、遺志継ぐ仲間


 熊本から石川県輪島市に移住し、高校生の学習支援に取り組んでいた地域おこし協力隊員が地震で帰らぬ人となった。「輪島の子どもたちに新しい居場所を作りたい」。そんな生前の熱意を受け継ごうと、活動をともにしていた仲間が再び生徒たちと向き合っている。

 「気さくで聞き上手。大人から子どもまで誰とでも仲良くなっていた」。地域おこし協力隊員として一緒に活動していた中川雄介さん(41)はその死を悼む。

 末藤翔太さん(40)は2022年3月、輪島塗を学びに来た妻とともに出身の熊本県から夫婦で輪島に移り住んだ。自治体の委嘱を受けて地域振興に取り組む地域おこし協力隊員として、翌4月から同市の県立輪島、門前両高校に出入りするようになった。定員割れが続く両校で学習環境を充実させようと市が進めるプロジェクトに協力するためだった。

「第三の居場所」つくりたい

 主な活動は、希望する生徒への放課後の学習支援だった。末藤さんが文系科目を、中川さんが理系科目をそれぞれ担当。両校での指導を手分けし、平日の週5回、放課後から午後9時ごろまでの4時間あまり丁寧に教えた。

 障害者の自立訓練事業所を経営したこともある末藤さんは生徒たちに「会社経営や福祉に興味があれば、ぜひ話しかけてください。勉強は楽しくしたもの勝ちです」と呼びかけ、温かく接した。当初集まったのは数人とわずかだったが、顔を出す生徒が増え、多い月では両校合わせて約80人が利用するようになった。

 中川さんが「いつか輪島に塾をつくりたい」と夢を語ると、末藤さんも賛同した。末藤さんも、自宅と学校以外に居場所の少ない輪島で、生徒たちがおしゃべりを楽しんだり、悩みを打ち明けたりできる第三の居場所づくりを思い描いていた。

生徒の胸に残っている

 能登半島地震が起きたのは、教育活動が順調に進んでいたさなかだった。末藤さんは元日、妻と一緒に自宅におり、倒壊した家屋の下敷きになって亡くなった。

 中川さんも孤立状態になった輪島市大沢町で被災し、約2週間後、金沢市に身を寄せた。仲間を失い喪失感に襲われる中、末藤さんが生前、「みんなを送り出そうよ」と輪島高の卒業式に出席しようとしていたことを思い出した。

 末藤さんの妻にも連絡を取り、金沢市に場所を移して3月1日に開かれた卒業式にそろって出席した。式終了後、1人の男子生徒が駆け寄ってきた。「末藤さんは優しくて、本当にお世話になりました」と一緒にいた末藤さんの妻にも頭を下げて言った。「彼のことは生徒たちの胸にちゃんと残っているんだ」。中川さんはそう実感し、涙がこみ上げた。

 学習支援は地震後に一時中断したが、オンラインでの指導を経て、2月下旬、両校で対面指導を再開した。輪島では今春、地震をきっかけに地元を離れ、金沢市など避難先の高校に進む新1年生も少なくない。

 中川さんは「彼が輪島でやりたいと言っていたことは、代わりに僕がかなえていく。輪島に残った生徒たちがここで頑張ってよかったと思えるよう精いっぱい支えたい」と誓っている。【大野航太郎】

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