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動くガンダム監修者の夢「ニュータイプになれるロボットを作りたい」


 横浜・山下ふ頭で今月末まで展示されている実物大の「動くガンダム」。プロジェクトの技術監修をしたのは、インドネシア出身のハルトノ・ピトヨ中京大工学部教授(54)だ。「もともとドラえもんが大好きで、ドラえもんのような知能を持ったロボットを作りたかったんですよ」。柔和な笑みを浮かべて経緯を語り始めた。

「ドラえもん」の衝撃

 1969年に、インドネシア第2の都市、スラバヤで生まれた。父親は海軍士官だった。船会社に出向していた父が、日本支社に転勤するのに伴い、小学1年で来日した。両親に買ってもらった「ドラえもん」のマンガをふりがなを頼りに読み、度肝を抜かれた。

 「ドラえもんは未来からやって来たのに、いきなりのび太たちと会話ができている。何でそんなことができるんだろう」。想像力をかき立てられた。

 「昔のドラえもんはいいかげんだった。体形も今より丸っこかったし、面倒くさがりで、すぐにサボりたがる」。そんな人間味のあるところにもひかれたという。

 3年後に帰国したが、高校を卒業後、日本に舞い戻った。東京・板橋のアパートから日本語学校に通い、帰宅後は数学や物理の大学受験用問題集を使って猛勉強した。

 早稲田大理工学部を受験し、面接試験では「ドラえもんを作りたい」と大真面目に話した。試験官は笑ったりせずに「何が必要と思う?」と身を乗り出して質問してくれた。

 ハルトノ教授の研究テーマは「知能の創発」。子どもの頃から、人間やロボットに限らず、世の中のありとあらゆる仕組みに興味があった。ドラえもんに出会って以来、「知能はどうやって作られるのか」とずっと考えてきた。それを解明するのが夢であり、生涯のテーマになった。

 今、注目しているのは「痛み」だ。人は転ぶと痛いので、小さい頃に、転ばないように、失敗を繰り返しながらバランスを取って歩くことを学ぶ。

 義手や義足も、何かにぶつかった時に痛みを感じれば、より早く、体の一部として取り入れることができるのではないか。そんなふうに考える。

 同じようにロボットが障害物にぶつかったら、操作する人にも疑似的な痛みが生じるとしたらどうか。痛みを避けるため、よりうまく操作するようになれば、人の新たな能力を引き出すことになるのではないか。そうやって人間とロボットを一体化させ、その間の境界を取り払いたいのだという。

 「将来は乗っただけで、その人の能力を引き出せるロボットを作りたい。乗るとだれもが『ニュータイプ』になれるものです」

 ニュータイプとは、「機動戦士ガンダム」シリーズに登場する、超人的な直感力や洞察力を持つ新人類のことだ。主人公のアムロは、ガンダムを自在に操り、兵士としての能力を開花させていく。

 研究の成果が、いつしか軍事的に利用される可能性はあるのだろうか。

 「僕は軍人の息子だけど、兵器は作らない。インドネシアでも、母国のために兵器を作るのかと問われたけれど、だれのためにも作るつもりはない」

 人の能力を高め、豊かな生活を送れるように――。それが科学技術の役割だと捉えている。「もし眼鏡がない時代に生まれていたら、僕は今と同じように仕事はできないでしょう。科学技術も眼鏡と同じで、今できない仕事が、できるようになるためのもの」と話す。

 確かに、ドラえもんは勉強も運動も苦手なのび太の生活を豊かなものにするため、はるばる未来からやってきたのだった。

 研究室の机には、ドラえもんのフィギュアがずらりと並ぶ。愛読書は「ドラえもん最新ひみつ道具大事典」(小学館)。すでに実現した道具があれば、これから実現しそうな道具もある。「何度読んでも飽きないですね」。仕事の合間にページをめくっては、想像をふくらませている。【岡村恵子】

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