「アホの坂田」の愛称で多くの人に親しまれたお笑い芸人の坂田利夫さんが2023年12月、82歳で老衰のため亡くなった。若かりし頃に後輩として苦楽をともにし、晩年まで半世紀以上、近くで寄り添った吉本新喜劇ゼネラルマネジャー（GM）の間寛平さんに、坂田さんとの思い出をうかがった。
駆け出し時代は一緒に寝泊まり
坂田兄さんとは僕が吉本新喜劇に入りたての20歳の頃、出会いました。テレビ番組「爆笑寄席」（関西テレビ）で共演したんです。当時から、兄さんは「コメディ№1」として人気者。でも偉ぶらずにすごく優しくて、甘えたら可愛がってくれました。僕は当時、家がなくて楽屋や芸人仲間の家を転々としていたんですが、兄さんもそんな生活。座員を泊めてくれるラブホテルがあって、一緒に寝泊まりしてました。僕が妻と結婚することになってマンションを借りたら、兄さんも別の階に部屋を借りて。3年ぐらいは毎日、僕の家で妻の手料理を食べてたんですよ。
兄さんは舞台以外で「アホ」の姿を見せませんでした。歩いている時に人から「坂田！」って言われても無視するけど、「アホ！」って言われたら「誰がアホじゃ！」ってめちゃくちゃキレる。ただ舞台では何をしても怒りません。どこで「アホの坂田」になるのか、切り替えてたんでしょう。いつも「他の誰よりもアホになって、お客さんに可愛がってもらわなあかん」と教えてもらいました。真面目でストイックなんです。
昨年12月26日の午前、「危ない」と連絡があり、病院に駆けつけました。「頑張れ！」と話しかけ続けましたが、段々言葉が無くなって「アメマー！」って大きい声で叫びました。兄さんはそれから3日間、生きました。言葉が届いたんやと信じてます。今の芸人は頭がいいから、考えて笑いを作るけど、兄さんは「地」のアホなんです。計算もなくバカになって、みんなにイジられる。ほんまにすごすぎた。あそこまでの芸人は出てこないでしょう。（吉本新喜劇ゼネラルマネジャー・間寛平）
