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さらば「根性論」 人手足りない道後温泉 脱アナログ働き方改革


 「よく働いてくれるので、助かってますよ」。松山市の老舗旅館「大和屋本店」の廊下で働くのは、人手不足の解決策として導入された“お掃除ロボット”だ。建設業や運輸業などで問題になっている人手不足は、観光業にも暗い影を落とす。人気観光地の道後温泉の宿泊施設も対策に頭を抱えており、AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)など最先端のデジタル技術を駆使するなど、あの手この手で乗り越えようとしている。

定着しない若者世代

 道後温泉で最大級の客室数を誇る大型旅館「道後プリンスホテル」によると、同旅館では若者の就職率が年々減少しており、ピーク時(10~20年前)の5割程度まで減少。土日がかき入れ時で友人と休みが合わせづらいことなどもあり、就職してもすぐ辞めてしまうなど離職率も高いという。コロナ禍もあって宿泊業全般で従業員の離職が加速。客足が復活しても戻って来ず、アルバイトや派遣社員も不足している。

 「頑張ればなんとかなる。そんな旅館業特有の根性論はもう古いんです」。慢性的な人手不足を受けて、道後プリンスホテルの佐渡祐収社長は語気を強める。若者らの離職率を減らすため、仕事効率が向上するDX化に着手。紙の伝票だったレストランのオーダーを自動化した。スタッフがオーダーをipodに入力すると、調理場などに伝達され、会計ソフトにも反映できるシステムだ。これまでは夜遅くまでスタッフが集計して手で打ち込む“アナログ”な作業が必要だった。

 これらのDX化は、スタッフの勤務時間や人数を減らすことにつながっているという。佐渡社長は「DX推進と(人手不足に対応する)働き方改革は車の両輪の関係。これからはなくてはならなくなると思う」と話す。

損失増えても「週イチ定休日」

 18年に改装した「道後御湯」では、温泉の湯量や設備を23年からアプリで管理している。修繕部分をスマートフォンのカメラで撮影して情報共有。各担当者への決裁や修理業者への発注などがスムーズになり、無駄な作業時間が削減された。「これまでは伝言ゲームのように何人もの手間や労力が必要だったので、すごく便利」とスタッフも喜ぶ。

 また、同館では働き方改革の一環として、改装を機に毎週水曜を定休日に設定。休みが増えた分、少人数でも対応できるよう、1人のスタッフがフロント係や客室係など複数の業務をこなす。DX化や休暇を増やしたことでスタッフの負担軽減につながり、接客が充実。宮崎光彦社長は「顧客の満足度もアップし、いつも満室の状態」と話す。休業日を設ける動きは、他の宿泊施設にも波及。ある施設の関係者は「1日休むと1000万円ほどの損失になることもあるが、人手確保や離職を防ぐためには致し方ない」と本音を口にする。

 地元の観光業者が結束し、AIを駆使した取り組みに挑む動きもある。道後温泉旅館協同組合青年部などは、2024年末までに、地元商店街などの道後エリア内に数台のAIカメラを設置。観光客の年代や性別、滞留時間や場所を分析したデータを共有することで、商店街の店舗で的確にスタッフを配置することなどに役立てる計画という。

「抵抗ある客いるかも」二の足も

 一方で、最先端技術導入に二の足を踏む施設もある。ある施設では、フロントの自動チェックイン機の導入を検討しているが、「人が対応してくれないことに抵抗がある客がいるかもしれない」と慎重な姿勢を崩さない。“おもてなし”を売りにする観光業にとっては、客離れにつながる危険性を懸念し、便利だからとすぐに手を出せない状況もある。

 道後温泉旅館協同組合によると、道後温泉の宿泊者数はコロナ禍の20年度は約41万人にまで落ち込んだが、22年度はコロナ前を超える約76万人に到達。23年度も前年を上回ることが見込まれるという。工事中だった道後温泉本館も今夏に全館営業を再開。組合は「人手不足は今後も続く。いろんな対策を講じて乗り越えていく必要があるだろう」と話している。【広瀬晃子】

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