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なぜ西条の「名物」は蚊なのか 高校生が資料と伝承調査、謎に迫る


 100年あまり前、愛媛県西条市の名物は「蚊」だった? ある本を手がかりに、同県立西条高校地域・歴史研究部員らがまとめた「西条の名物『蚊』の謎」が2023年度の「鳥居龍蔵記念 全国高校生歴史文化フォーラム」(徳島県立鳥居龍蔵記念博物館主催)で入賞した。同校は3年連続入賞。懸命に探った「蚊の謎」とは--。

 調査に当たったのは2年生の栗田晴一朗さん、請川あかねさん、鶴川快斗(かいと)さん。23年の3月ごろ、地域史に詳しい当時の顧問・永井紀之教諭(現・県立今治西高教諭)から「こんな面白いものがあったよ」と、国立国会図書館デジタルコレクションにある「西條案内」という本を示されたのが始まりだった。

 「西條案内」は現在のJR予讃線伊予西条駅が開業した1921(大正10)年に鉄道開通祝賀協賛会が出版し、当時の西条の地理や名所、産業などを紹介している。うち「西條名物」の項目は「加茂川の鮎(あゆ)」「打抜(うちぬき)水」「西條柿(かき)」「西條祭禮(まつり)」などとともに「蚊」を挙げている。リード文にも「西條名物には美味(うま)いものが多い。但(ただ)し(中略)西條祭りや蚊などは喰(く)ふ譯(わけ)にゆかぬ」とわざわざうたっている。

 「愛媛県には1990年の時点で計23種の蚊が生息しているが、それがどうして西条の『名物』として挙げられているのか」。最初はちんぷんかんぷんだったが、栗田さんらは4カ月ほどかけて民話や伝承を探り、蚊が群生する可能性がある場所なども航空写真で分析した。

 伝承を調べるうち、西条市と2004年に合併した旧丹原町にある生木(いきき)地蔵には弘法大師(空海)と蚊にまつわる話が残っていることが分かった。大師が生木に地蔵菩薩(ぼさつ)を彫った際に蚊にかまれたが、殺さずに袋に取っておき、翌朝に放した。その子孫が増え、今でも丹原には蚊が多いという言い伝えだ。

 また、西条郷土博物館の館長から「西条では昔から犬が突然鳴いて死ぬことが多かった。蚊が媒介する寄生虫によるフィラリア症だ」という貴重なエピソードを聞くこともできた。

 航空写真を基にした分析では、水の流れが緩やかで、人の出入りがある場所を条件に、西条市内の水辺をピックアップした。市内各所には地下水の自噴井戸「打ち抜き」が今も多くあり、名水として親しまれる。「近隣の他地域と同様に水田や湿地はあるものの、発生する蚊の数に差が生じるとするならば、こうした西条特有の水辺の多さによるものと考えられる」「他地域と比べた蚊の多さが、蚊を名物として挙げさせたのだろう」と3人は結論づけた。

 栗田さん、請川さんは調査の一部を23年9月の同校文化祭で発表。聴衆の一人だった鶴川さんは「すごい情報収集能力」と驚き、すぐに入部した。リポートを振り返り、請川さんは「自分が住む西条の水の豊かさを改めて実感した」、栗田さんは「地域の歴史の中でも生活の細部は失われやすい。明治、大正、昭和の歴史をこれからも調査したい」と話している。【松倉展人】

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