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奇祭・はだか祭に初の女性 絡まった思い込みの糸、しきたりの壁に


 「男の祭りだと思い込んでいた」。日本三大奇祭の一つで、22日に愛知県稲沢市の国府宮神社で開かれる「はだか祭」のササ奉納に、1300年近くの歴史の中で初めて女性団体が参加する。地元の会社員、入山友香さん(48)=一宮市=が参加者を募ると、次々と女性たちが手を挙げ、神社側も受け入れた。「男性限定」というしきたりの壁は、いかにして破られたのか。

そもそも、どんな祭り?

 はだか祭は、触れると厄落としができるという「神男(しんおとこ)」を目掛け、数千人のふんどし姿の裸男たちが激しくもみ合うことで知られる。それに先立つのが「儺追笹(なおいざさ)奉納」だ。願い事が書かれた布を結びつけた巨大なササを担ぎ、勢いよく境内に駆け込んで奉納する。参加する女性たちは、入山さんの団体のほか、踊りや還暦のグループなどで、計100人以上になる見込みだ。

 祭りは奈良時代が起源。江戸時代末期に始まったとされるもみ合いは、衣類が首にまきつく恐れがあるため、服を脱ぐようになったという。ササ奉納も、ふんどし姿の男性がするのが通例だった。片山貢・祢宜(ねぎ)によると、神社側は女性の参加を禁止したことはないが、危険が伴うことから「慣例として男の祭りというイメージができていた」という。

きっかけは知人男性の「出ればいい」

 変化のきっかけとなったのは、30年近くはだか祭を見学してきた入山さんの一言だった。入山さんはササ奉納を行う男性の着替えを持って、近くを歩いたこともある。しかし、男性たちの後ろを歩くだけでも「何で女が」と罵声を浴びた。

 入山さんが2年前、神男を経験した知人男性に「男の人は(参加できて)いいよね」と漏らしたところ、「出ればいいのに」と言われた。祭りに毎年出ている長老格の男性からも「時代も時代だし、いいんじゃない」と後押しされた。OBらを通して、女性の参加を禁じているわけではないことを神社側に確認。当初は「本当かな」と半信半疑だったという。

次々と集まった同志

 入山さんは2023年夏から仲間を募り、20~60歳代の約40人が集まった。名古屋や岐阜からも加わり、外国人も手を挙げた。「友達やいろいろな方の縁を頂いて参加する」との思いから、グループを「縁友会」と名付けた。23年10月に知人ら男性数人と神社を訪れて正式に参加を申し入れ、承諾を得た。

 背景にはコロナ禍による変化もあった。21~22年は感染防止のためもみ合いが中止され、ササ奉納も着衣で行われた。その前から女性を含む家族や個人が普段着で奉納することはあり、女性団体が着衣で参加しても、違和感は薄れていた。

 縁友会の副会長を務める鈴木彩加さん(36)も、裸男として参加する父雅徳さん(64)の姿を見ながら育った。「はだか祭はとても輝いて見えた」。自分も男だったら出たいと、ずっと思ってきた。「ふんどし1枚になるので、女性は出られないと、自分も皆さんも思い込んでいたのでは」と振り返る。

 雅徳さんも「かつては女性の参加など考えもしなかったが、より盛り上がるのではないか」と期待する。

神社側は歓迎「そんな時代ではない」

 角田成人・権祢宜(ごんねぎ)は「女性は“不浄”にあたるとして、一切お供え物に触るな、祭に関わるなとされてきた歴史があったのは事実。しかし、男女平等の世の中で、もう、そんなことをいう時代ではない」として、今回の動きを歓迎。時代の流れも後押しした。

 縁友会の女性たちは、約700人分の願い事の布をくくりつけたササ3本を奉納する。これまでは近所の男性らに託してきた布だ。皆生粋の祭り好き。紫色の法被をそろえ、ササを持って駆け込む練習も2回行った。

 鈴木さんは晴れやかな表情で言う。「私たちの参加で地元がもっと盛り上がってほしい。見るだけだったのが出る側になり、本当に最高の気分です」 【川瀬慎一朗】

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