中国の春節（旧正月）に合わせ、長崎の街をランタンが彩る「長崎ランタンフェスティバル」。ハイライトは中国衣装をまとった参加者が練り歩く17日の「皇帝パレード」だが、警備に当たる関係者が例年以上に神経をとがらせている。長崎が生んだ「スーパースター」、シンガー・ソングライターで俳優の福山雅治さん（55）が皇帝役として満を持して登場し、大混雑が予想されているからだ。
ランタンフェスは、1994年に始まった冬の長崎の風物詩。2024年は新型コロナウイルスの感染拡大による中止と規模縮小を挟み、4年ぶりの通常開催となった。2月9～25日の期間中、長崎市新地町の新地中華街など市内各地が約1万5000個のランタンで彩られる。
メインとなる17日のパレードは、中国・清朝の皇帝と皇后が民衆と新年を祝う様子をイメージ。例年は新地中華街周辺など市街地を巡るが、今回は「特別版」と題し、出島を午後1時半に出発。午後3時にJR長崎駅前の大型交流施設「出島メッセ長崎」に到着する市内約1・3キロのコースを、きらびやかな衣装を着た約100人が練り歩く。
パレードの主役となる皇帝役を今回、初めて務めるのが長崎市出身の福山さん。皇后役にも、同県東彼杵（そのぎ）町出身の俳優、仲里依紗（りいさ）さん（34）がこちらも初めて出演する。
有名人2人が登場するとあって、沿道に設ける特設エリアからの鑑賞には事前募集した定員約2万6000人に対し、約6・5倍となる約17万人が応募。ランタンフェス実行委には抽選に外れた人から「すごく残念だった」「どうしても見たかった」との声も寄せられているという。フェス自体の人出も久々の通常開催で混雑が予想されているため、多くの人が沿道に詰めかけると想定されている。
実際、既にパレード周辺の公共交通機関やホテルにも影響が出ている。
九州新幹線長崎ルート（西九州新幹線）は午前中に長崎に着く便が始発などを除き、ほぼ満席。福岡と長崎を結ぶ高速バスも、午前中の便で満席かほぼ満席の状態となっている。コース付近を走る路面電車を運行する長崎電気軌道は、混雑状況を見ながら臨時電車の運行も検討するという。
ホテルも、長崎駅前のホテルニュー長崎、東横イン長崎駅前はパレード前日の16日、当日の17日とも満室。東横インの担当者は「福山さんのパレード出演や4年ぶりの通常開催による影響が大きい」。1月に開業した九州初のマリオットホテル「長崎マリオットホテル」も17日の予約率は高いといい、担当者は「17日は通常より料金を高く設定しているが、予想を上回る予約が来ている。パレードの効果が大きい」と話す。
警備態勢も異例の規模となる見通しだ。
長崎県警は県警本部の「ほぼ全部署」（大庭芳輝・地域課管理官）や所轄の長崎署などを中心に、450人が沿道の警備に当たる。過去3年間の雑踏警備で最大規模になるといい、大庭管理官は「福山さんらが訪れるので、警備を強化している。県内外から多くの人が訪れるので、厳戒態勢で臨む」と気を引き締める。
ランタンフェス実行委も、事務局スタッフら300人のほか、アルバイトを100人前後加え、安全確保を期す。市内の企業からもボランティアで100人以上が警備に当たるという。
有名人が出演したパレードでは22年11月、俳優の木村拓哉さん（51）と伊藤英明さん（48）がゲスト出演した岐阜市の「ぎふ信長まつり」で、観覧申し込みに定員（1万5000人）の約64倍となる約97万人が応募。当日は抽選に外れた人も含めて約46万人が訪れた。【川島一起、高橋広之】
