米国のトランプ前大統領は1月31日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチール買収について「私なら即座に阻止する。絶対にだ」と買収に反対する立場を表明した。ブルームバーグ通信などが報じた。
首都ワシントンで大手労働組合の幹部と面会した後、記者団に語った。「USスチールは日本に買収されようとしている。ひどい話だ。我々は雇用を国内に取り戻したい」とも話した。トランプ氏がこの件で自らの考えを明らかにするのは初めて。
日本製鉄は2023年12月、約141億ドル（約2兆円）でUSスチールを買収すると発表。だが、米国内ではかつて米製造業を代表する存在だった名門企業が海外企業に買収されることへの抵抗感が強く、全米鉄鋼労働組合などが反対している。
バイデン政権も安全保障上の観点から買収を認めるか厳格に審査する考えを表明した。「買収相手が同盟国の日本企業のため実際には深刻な懸念はない」（大手商社幹部）との見方もあるが、11月の大統領選で支持基盤の労組票を確実に取り込む狙いがあるようだ。
トランプ氏は大統領選に向けた共和党の候補指名争いでトップを走り、労組票の切り崩しも狙っている。ライバルのトランプ氏が買収反対の立場を明確にしたことで、バイデン政権は買収を認可しづらくなりそうだ。【ワシントン大久保渉】
