2025年大阪・関西万博にパビリオンの出展を表明していた複数の国が、万博から撤退する意向を日本政府に伝達したことが10日、判明した。撤退意向が示されたのは初めてで、撤退ドミノが起きれば、万博の魅力低下につながるのは必至だ。政府関係者によると、うち1カ国はメキシコで、自前での建設に必要な予算確保の見通しが立たないことが理由という。
万博には153カ国・地域が参加を表明している。日本政府関係者によると、パビリオンを自前で建設する「タイプA」での出展を希望していたメキシコは、24年6月に大統領選を控え、建設に必要な予算確保への不透明感が増しているという。日本側はより低コストな参加方法として、日本国際博覧会協会が建てたパビリオンを複数の国・地域で共同利用する「タイプC」への移行などを働きかけ、つなぎ留めを図る構えだ。政府関係者は「厳しい交渉の途中だ」と語った。
万博の海外パビリオンを巡っては、資材価格や人件費の高騰で建設業者との契約の遅れが表面化。タイプAで参加する意向だった60カ国のうち、8月に全土が大規模洪水に見舞われたスロベニアは、自国の災害復旧を優先するため、自前での建設を断念。スロベニアなど2カ国がタイプCに、アンゴラとブラジルは、協会が建てた簡易施設の引き渡しを受けて内外装を施す「タイプX」への移行をそれぞれ決めた。
関係者の間では「60カ国のうち約半数がXに移行しないと、25年4月の開幕に間に合わない」との見方がある一方、協会の石毛博行事務総長は、Xに移行した場合でも「年内か来年1月の着工が必要」との認識を示している。業者との契約が困難な状況が続くなか、参加国の「最終判断」の期限は差し迫っている。
自見英子万博担当相は10日の記者会見で「個別の参加国の状況については外交上の観点からコメントを差し控える」と述べるにとどめた。【東久保逸夫、池田直、富美月】