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高校生が考える3年6億円の使い道 学校施設整備へ兵庫県が予算


 公立高校の生徒会に使い道を自由に決められる予算の話が舞い込んだ。3年間で約400万円。高校生にとっては大きな金額だ。生徒会長は「大きなお金を動かすなんて漫画みたい」と胸を躍らせた。高校生らが参加した県内で総額約6億円に上る予算編成に迫った。

 夏休みを控えたある日、兵庫県立伊川谷高校(神戸市西区)の生徒会は、生徒指導の教員から学校に予算が配分されると聞いた。2023年度から3年間で計392万5000円。授業や部活で使う備品の購入に限られるが、使い道は自由に決められる。県教育委員会が「生徒の意見を反映する」よう求めているという。

 「生徒会が欲しい物を購入しても使い切れないし、他の生徒にも怒られるほどの大金。みんなで話し合って何に使うか決めることにした」。生徒会長の2年、地下(ぢげ)真咲さん(16)は振り返る。部活の主将らを集めた会議や各委員会で説明し、部員らで相談して意見をまとめてもらうことにした。

 野球部からの要望を受け、移動式の屋根とベンチを導入することに。日差しの強い夏場でも、屋根のないベンチで練習試合をしていたためだ。主将の2年、小谷悠真さん(16)は「日陰に水筒も置いておけるし便利になる」と喜ぶ。野球部以外も利用するという。

 同校では他に、図書室の机や椅子▽生徒会用のノートパソコンとプリンター▽体育館カーテン――などの購入を決めた。

 こうした自由度の高い予算に教職員も驚きを隠さない。「そもそも部活動に使えるということでびっくりしたが、規模も想像以上だった」。毎年度の学校予算ではボールなどの消耗品の更新で手いっぱい。「今回購入が決まった備品は、従来の予算の範囲では絶対に購入できなかった」と語る。

 授業や部活の備品について県立学校が自由に使い道を決められるこの予算総額は3年間で約6億円だ。県立高校135校、特別支援学校27校、中等教育学校1校の計163校に、規模に応じて配分される。全日制高校なら少なくとも100万円近くとなる。

 各校は生徒によるアンケートや検討会の意見を踏まえ、購入計画をまとめた。希望が多かったのは、伊川谷高の屋根やベンチのような部活動の備品で、全体の41%を占めた。この他、個人ロッカーや下足箱などの生活環境29%▽プロジェクターやモニターなどの授業用備品16%▽机・椅子などの学習環境13%▽図書など1%――となっている。

 既に備品が整備された学校もある。3年間で580万6000円が配分される県立星陵高校(神戸市垂水区)は10月、3年生にだけ整備されていなかった個人ロッカーを設置した。

 「小さく見えるけど意外と荷物はたくさん入るんです」。元生徒会長の3年、見田遥哉さん(18)は教室前の廊下に置かれたロッカーを開け、笑顔を見せた。「自宅に持ち帰る必要のない問題集などを置けて便利。みんな活用している」と喜ぶ。

 ラグビー部の見田さんがそれ以上に期待しているのが、サッカー部と共に使用しているグラウンドの芝生化だ。学校が自由に決められる備品整備とは別の事業だが、芝生化は同校の他にも社、伊丹北の2校で進められる。最後の大会を終え、自身は芝生グラウンドで練習できないが「後輩は良い環境で練習し、良い成績を収めてほしい」と期待する。

 県は少子化や人口減少を背景に、子育て世代に加え、結婚や出産を控える若い世代や学生らの支援を掲げ、学びやすい▽働きやすい▽子供を産み育てやすい▽住みやすい――兵庫を目指している。

 「生徒ファーストの視点で環境改善を進め、故郷を思うシビックプライド(地元への誇りや愛着)を育てたい」。斎藤元彦知事は23年1月の年頭記者会見で、県立学校の施設整備に23~28年度の6年間で300億円程度を投じる方針を明らかにしていた。教育環境を充実させ、兵庫に住み教育を受けたいと希望する人を増やしたい考えだ。

 かつて県立学校を視察した際、生徒から「部活や授業で使う用具や備品が老朽化したまま更新されない」と要望を受けたという。県教委も新たな施策の検討材料に尋ねたインターンシップ中の高校生約20人から「部室の空調」「エレベーター」などの設置を求められていた。学校や生徒によって要望は異なるため、斎藤知事と藤原俊平教育長は23年1月の予算協議で、学校や生徒自身に使い道を決めてもらう予算を導入することを決めた。

 6年間300億円のうち、多くは避難所指定される体育館の空調設置などの環境整備(126億円)や教室不足が問題化している特別支援学校の整備(162億円)に充てられる。芝生化の3億円と、授業や部活の備品整備の9億円は「部活応援」と銘打つ。このうち3億円は全校統一で球技用ボールや卓球台、テニスラケットなどの用具費となり、自由に使い道を決められるのは残る6億円だ。

 県内の高校生の約7割が公立高校に在籍しているが、これまで授業や部活で使う備品の整備費用は他の都道府県に比べて少ない。こうした費用を含む学校運営経費は20年度、県立高校1校当たり6430万円で全国46位だった。

 県教委が進める関連事業を単年度に換算し、20年度の学校運営経費に加えれば、架空の順位ながら28位まで上昇する見込みだ。斎藤知事は「全国トップクラスまで魅力ある県立学校の環境整備を進めたい」と力を込める。【宮本翔平】

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