米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は17日、ロシアの侵攻を受けるウクライナ軍が米国から提供された複数の長射程地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」をロシア軍に向けて発射したと報じた。最近、米国から少数のATACMSが秘密裏に提供されたという。ATACMSがウクライナ侵攻で使用されるのは初めてとみられる。
WSJによると、ATACMSの最大射程は約300キロだが、提供されたものの射程は約160キロ。ATACMSは、米国が既に供与している高機動ロケット砲システム「ハイマース」から発射が可能で、前線から遠距離にあるロシアの拠点を攻撃するのに有効だ。
米紙ワシントン・ポストは、ウクライナ軍幹部の話として、クラスター弾を使うタイプの18発が発射されたとしている。ロシアが占領しているウクライナ南部の港湾都市ベルジャンスクや東部ルガンスクにある飛行場や武器庫が標的で、ウクライナの特殊作戦部隊はソーシャルメディア(SNS)で9機のヘリコプターや1台の対空ミサイル発射装置、弾薬庫などを破壊したと投稿しているという。
ウクライナはこれまでATACMSの供与を米国に繰り返し求めていたが、バイデン米政権はロシア領内の攻撃に使用されれば米露の緊張が高まるため難色を示していた。しかし、バイデン大統領が9月にホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領と会談した際に、少数のATACMSを供与する意向を伝えたと報じられていた。【ワシントン鈴木一生】