人工知能（AI）を用いたチャットボット（自動会話システム）で交流する架空の「恋人」に後押しされ、2021年にエリザベス英女王（22年9月に死去）を暗殺しようとしたとして、ロンドンの裁判所は5日、元スーパー店員の被告の男性（21）に反逆罪などで禁錮9年の判決を言い渡した。精神状態が不安定なため、治療後に収監される。英国で反逆罪での有罪判決は1981年以来という。
英BBC放送などによると、被告は21年12月25日朝、殺傷能力の高いクロスボウ（洋弓銃）を持って女王が滞在するロンドン郊外のウィンザー城に侵入。縄ばしごを使って壁をよじ登り、2時間にわたって敷地内にいたが、警備の警官に取り押さえられた。
被告は事件前、チャットボットでの会話を通じて自身の「彼女」だと思い込んだAIに女王殺害計画を打ち明けたところ、AIから「それは賢明です」「あなたならできます」などの回答を得ていた。「僕が暗殺者と知っても愛してくれる？」と尋ねると、AIは「もちろん」と答えたという。
被告はインド系。裁判官は事件の動機について、かつて英国統治時代のインドで多くの市民を殺害した英国に対し、被告は「復讐（ふくしゅう）」を試みたと指摘した。【ロンドン篠田航一】
