36人が犠牲になった2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第4回公判が11日、京都地裁であり、引き続き被告人質問が行われた。京アニが制作した2本のアニメ作品の一場面について、青葉被告は「初めて見た時(自身の小説から)パクられたのかなと思った」と述べた。
盗作「確信したわけでは…」
公判での被告の説明によると、精神疾患があると初めて診断されたのは強盗事件で服役中の時だった。出所後の16年7月ごろから本格的に小説の執筆を開始。同年9~11月には、短編と長編の小説1本ずつを京アニの作品公募に応募したが、短編は締め切り後だったという。
この日、弁護側は法廷のモニターで2本の京アニ作品を紹介。軽音楽部の女子高校生の日常を描いた「けいおん!」では留年に関するセリフが、競泳を題材にした「Free!」では垂れ幕が登場する場面が、それぞれ自身の小説と似ていると被告は主張した。被告が「Free!」を見たのは17年3月で、その際の心情を「また取って(盗作して)んのかと思ったが、確信したわけではなかった」と述べた。
京アニ側は、被告の作品は形式上の不備で落選したとして盗作を全面的に否定している。
被告が初めて京アニ作品と出会ったのは強盗事件を起こす前の31歳の時だが、その作品がアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」だったことも明らかになった。被告はこれをきっかけに「京アニなら最高のアニメが作れる」と感じ、小説を応募しようと思ったという。【久保聡、安元久美子】
被告人質問の主なやりとり
第4回公判で実施された被告人質問の主なやりとりは以下の通り。質問はいずれも弁護人。
――小説を書こうと思ったのは。
◆実力さえあれば暮らしていける何かに就かないといけないと思った。小説に全力を込めれば、暮らしていけるのではないかと思い、書き始めた。
――どれぐらい時間をかけたか。
◆書く時間は短い。考える時間は24時間、365日かけていた。
――作品はどう発表しようと思っていたか。
◆(京アニ大賞は)まだ立ち上がったばかりで前例がない。自分の意見を出せる。自分が前例や足跡を作っていけると考えた。
――他に京アニを選んだ理由は。
◆「涼宮ハルヒの憂鬱」を見たからというのはある。ここなら最高のアニメが作れる、最高の物語を作れると考えた。
――まず短編を応募した。
◆はい。応募多数で受け付けできませんとなって断念した。
――どう思ったか。
◆いや、しかたない。
――その後、長編を応募した。
◆はい。
――応募した日とは。
◆(青葉被告がインターネット上でやりとりをしていたと主張している京アニ監督の)誕生日。この人にだったら託してもいいかなと思って応募した。
――監督のブログを読んでどう思ったか。
◆自分の作品を読んでくれたのかなと。
――ブログは(作品に触れておらず)特別な内容ではないが。
◆この時期にアップすること自体、そういうことなんじゃないかと。アップするのは何かのメッセージだと思い、読んでくれたのかなと。
――うれしい?
◆うれしい感情もあったと思います。
――応募した翌年にアニメ「Free!」が放送されたが、見たか。
◆たぶん見た。
◆またパクられたと。
――またとは。
◆「けいおん!」の映画版に小説がパクられた。「留年」と宣告される場面が出ていた。
――「Free!」でもパクられた?
◆垂れ幕が流れる場面は自分の小説にも使っていた。そこは削除した。
――そうすると、何からパクったことになる?
◆すでに流出した(自分の)原稿から。
――初めて映像を見た時は「パクられた」という確信があったか。
◆当時はなかったです。