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海水を飲む不思議な鳥・アオバト 大磯で続く「こまたん」の調査


 神奈川県大磯町の照ケ崎海岸の岩礁に春から秋にかけて、アオバトという野鳥が多く飛来する。この時期だけ海水を飲む不思議な鳥で、間近で観察できる場所は全国でも珍しい。この海岸を一躍有名にしたのは地元の野鳥愛好者グループ「こまたん」。今も熱心な調査を続けている。

 アオバトは全長約33センチの中型のハトだが、特徴は緑色の体だ。頭部から胸にかけて黄色味が強くくちばしの色はライトブルー。オスは羽や肩に小豆色の部分がある。今年は4月27日から照ケ崎海岸への飛来が始まり、7月後半からは午前中の4時間で延べ1000羽以上が飛来した。8月ごろまでが例年、ピークだという。

 「こまたん」は「高麗(こま)山・花水川探鳥会」の愛称。高麗山は大磯町と平塚市にまたがる丘陵地で、近隣に住む野鳥好きが常時20~30人でアオバトの調査を進めている。

 こまたんが本格調査を始めたのは1991年。海岸への飛来時期や飛来数などを連日調べ、岩礁に残されたフンから標高1000メートル以上に生えるミヤマザクラなどの種子が見つかり、普段は丹沢山地の標高の高い地域で巣を作って過ごしているのを突き止めた。

 「なぜ海水を飲むのか」の謎にも迫った。春から夏にかけて繁殖期を迎えたアオバトは主に木の果実などを食べるが、不足するのはナトリウム分。それを補給するため海水を飲むのだという。子育て中のオスとメスが交代で丹沢から大磯へと飛来。夕方に丹沢を出発したオスは大磯周辺の山林で一夜を過ごして早朝に海水を飲み、メスと交代するため丹沢まで帰るといった行動も確認した。

 県は96年、照ケ崎海岸の岩礁地帯をアオバトの飛来地として天然記念物に指定したが、その参考資料となったのがこまたんの調査結果だった。

 ところでなぜ、照ケ崎海岸にアオバトが集まるのか。

 メンバーの金子典芳さん(64)=平塚市=は「満潮でも岩礁が沈まず、アオバトはいつでもくぼみにたまった海水が飲める。近くに天敵から身を隠せる山林もある。大磯の特殊な地形がアオバトを呼び寄せている」と解説する。だが、「謎はいまだに多い」という。例えば、春から秋に丹沢・大磯に飛来するアオバトが全羽この場で越冬するわけではない。多くのアオバトは冬はどこで過ごすのか。どのルートを通って丹沢に入るのか。まだまだ不明な点は多い。「興味は尽きない。だから調査は今も続くのです」

「若い人も気軽に来て」

 こまたんはホームページ(HP)で連日の飛来数など調査結果を公表し、地元の小学生向けの観察会など普及活動に取り組んでいる。早朝に連日のように飛来数を記録している小野肇さん(69)=茅ケ崎市=は海岸に訪れる人たちにアオバトの魅力を説明している。「アオバトは大磯の宝。多くの人に親しんでほしい」と語る。

 こまたんは今年も9月までの毎月最終日曜日に無料の観察会を開催する。スコープでアオバトが海水を飲む様子を観察したり、メンバーからアオバトの生態など知識を学んだりすることができる。7月30日の観察会には39人が参加した。

 「毎月の観察会は朝6時から9時までやっているので、好きな時間に気軽に来ていただければ」と語るのは、ベテランメンバーの斎藤常実さん(72)=茅ケ崎市。「特に若い人にアオバトへの興味を持ってほしい。後継者もどんどん育成していきたい」。こまたんの視線は「次」に向けられている。【高山祐】

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