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「工事終わる頃、人が残ってるか」九州豪雨3年、止まらぬ人口減


 九州5県で災害関連死を含め81人の死者・行方不明者を出した九州豪雨から4日で3年となった。被災地では復旧・復興工事が進むが、長期化は避けられず、人口減に歯止めがかからない。熊本県南部を流れる球磨川が氾濫し特別養護老人ホーム「千寿園」の入所者14人を含む25人が犠牲となった球磨村では、豪雨前に比べ人口は約4割減った。生活再建に向けた課題は山積しており、自治体としての機能を維持できるか正念場を迎えている。

始まる気配なし、将来が描けない

 「宅地かさ上げ工事が終わる頃に、どれだけ人が残っているだろうか」。6月下旬、豪雨後に不通が続くJR肥薩線球泉洞駅前。更地に立った平野みきさん(52)がため息をついた。

 平野さんの母、川口豊美さん(当時73歳)と伯母の牛嶋満子さん(同78歳)は、駅前で釣り客向けに弁当などを売る商店を切り盛りしていたが、豪雨で店舗兼自宅は球磨川からあふれ出た濁流に跡形もなくのまれ、2人とも犠牲になった。

 平野さんは店を再建したいと考えているが、道筋を描けないでいる。周辺は閑散とし、駅舎も壊れたまま。かさ上げ工事が始まる気配はなく、2022年夏に球磨村から隣の熊本県山江村に引っ越した。「将来的には村に戻りたいが、(再建を諦めるという)踏ん切りを付ける時が来るかもしれない」とこぼす。

 県の推計人口によると、球磨村の人口は今年6月現在で1883人と、豪雨前の3212人から41・4%減少。道路や鉄道の復旧は進まず、宅地かさ上げなどの治水事業も完了までは長い時間が必要となる。村の約9割が山林で宅地に適した土地も少ない。周囲の被災自治体の人口減少が2~9%程度にとどまる中、球磨村の人口減は突出する。

 村から約20キロ離れた熊本県錦町で夫婦2人で暮らす高沢正道さん(75)は、村役場から車で15分ほどの山あいに自宅があったが、豪雨で道路が寸断された。その後、村外での仮住まいを経て錦町の中古住宅を購入。「数年後に(高齢で)車に乗れなくなることを考えると病院やスーパーに近い方が良い。さびしいが仕方ない」と肩を落とす。

子育て世代流出、防災力にも影

 子育て世代の離村も相次ぐ。村内の5月現在の小中学校の児童生徒数は167人で豪雨前の7割に減った。村内の仮設住宅で夫と子ども4人で暮らす西門瑠美子さん(37)は「子どもが小さいので住み慣れた場所で子育てしたい」と村内に残る意向だが、「子どもの通学が大変になれば将来的には村外に出るかもしれない」と口にする。

 人口減は地域防災力の維持にも影を落とす。豪雨で孤立した高沢地区の人口は、5月末現在で29世帯72人と3年前の4分の3に減少。高齢化も進み、地区に残る高沢敏治さん(74)は「また豪雨があれば、残った住民だけで高齢者を避難させるのは難しい」と話す。

 球磨村の松谷浩一村長は「これほど村外に出るとは思っていなかった。子育て世代の流出は村にとって大きなダメージだ」と危機感を隠さない。災害公営住宅の整備や宅地造成など生活再建が急務との認識を示し、「村として、生活再建を最優先に進めてきたが、村民の求めるスピード感と差があるのだろう。集落を孤立させないために迂回(うかい)路の整備や教育環境の充実に力を入れ、これ以上の流出を防ぎたい」と語った。【城島勇人】

防災+αの視点が大切

 ■災害復興に詳しい室崎益輝・神戸大名誉教授の話

 東日本大震災などでもそうだが、災害後に人口減少が急激に進む地域と住民同士が話し合って、にぎわいを維持する地域と二極化している。人口流出に歯止めをかけるには、インフラ復旧のみならず、山間部に生鮮品や生活必需品の移動販売車を走らせたり、医療、福祉のケアを充実させたりと、住民が安心して暮らせる環境をいかに作れるかが重要になる。防災は必要条件だが、十分条件ではない。地域の魅力を高め、産業活性化やにぎわい創出につなげるなど防災プラスアルファの視点が大切で、国や県も支援すべきだ。

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