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モスクワに向かう橋、兵士だけが立った ワグネルの乱、恐怖の1日


 ロシアの首都モスクワ中心部から南方約120キロに位置するモスクワ州ソコロバ・プスティニ村。州境近くを東西に流れるオカ川に面して、のどかな景色が広がる。だが、露民間軍事会社「ワグネル」が武装蜂起し、南部ロストフ州から首都へ向けて進軍した6月24日、緊張感が極度に高まっていたという。ワグネルがオカ川近くまで進んだら、首都と近郊を防衛する軍や治安部隊が橋を落として阻止を図るのではないか――。そんな臆測が広がった。

 記者(大前)は4日後の同28日に村を訪ねた。川に架かるノボカシルスク橋では車が行き交い、平穏な様子だ。だが、近くのカフェで働く人たちによると、反乱当日は防衛部隊が展開して一帯を封鎖した。女性従業員(25)は「橋の通行が止められて向こう岸から戻れなくなり、恐怖を感じた」と表情を硬くした。

 村に暮らす10代前半とみられる少年は「住民は橋の周りから追い出され、兵士だけが残り、とても怖かった」と語る。事実かどうか不明だが、少年は防衛部隊が橋に爆薬を仕掛けていたとも興奮気味に話した。

 ワグネルの進軍について、創設者プリゴジン氏は首都まで200キロ以内に達したと主張。前例のない反乱と進軍が多くのロシア市民をおびやかした面は否定できない。モスクワに住む男性マルクさん(34)は「プリゴジン氏は1日で首都まで進軍でき得ると示した」と話し、防御態勢の手薄さを指摘した。

 ワグネルが政権に反旗を翻してから7月1日で1週間。事件はプーチン大統領の威信や軍の規律を揺るがし、早期の回復は見通せない。【モスクワ大前仁】

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