めったにお目にかかれない新幹線と大阪の激安スーパーが組んで発売したトートバッグが人気だ。関西でしか手に入らないので東京から足を運ぶ人もいるほどで、当初用意した1000個を完売した。両者の共通点は黄色い外見のみ。何がヒットを呼んだのか。
バッグに描かれているのは、ひまわりのマークから飛び出す黄色い新幹線。「新幹線のお医者さん」とも呼ばれ、走りながら設備を点検する「ドクターイエロー」だ。ひまわりは大阪・兵庫に28店舗を展開するスーパー玉出（大阪市西成区）のロゴマーク。4月に発売されると、ツイッターでは「気は確かか」「面白すぎ」といった投稿が相次いだ。
誕生のきっかけは、東海道新幹線を運行するJR東海からの申し出だった。新型コロナウイルス禍で新幹線の乗客が減る中、20～30代の若手社員が中心となって話題になる何かを探していた。そこにグループの旅行会社から「大阪に面白いスーパーがある」と提案が寄せられた。
ギラギラの「玉出」に衝撃
「何だ、これは。東京にはないスーパーだ」。東京出身でスーパー玉出の存在を知らなかったJR東海の宮沢理香さん（28）＝営業本部地域創生グループ＝は驚いた。黄色い外観にネオンがギラギラ輝く店舗は衝撃的だった。
この時、既にスーパー玉出は自社マークを描いたエコバッグを販売しており、首都圏でも隠れた人気があった。「同じ黄色のドクターイエローとコラボしたら面白いネタができる。新幹線の需要をつくるきっかけになるのでは」。話を持ちかけられたスーパー玉出の担当者は「（JR東海には）お堅いイメージがあったので、意外だった」と打ち明け、「口コミでじわじわ広がると思いきや、発売直後から一気に売れた。店側の在庫を切らさないようにするのが大変だった」と手応えを語った。
こだわったのはバッグのデザイン。激安スーパーとしての勢いや派手な雰囲気を表現した。4月に用意した1000個は5月末に完売しており、追加で生産している。
入手は関西のみ 首都圏から誘客
あえてインターネットでは販売していない。JR東海の会員向けサービスのポータルサイトで申し込んだ後、新大阪駅の旅行会社で引換券を受け取り、スーパー玉出の対象店舗で商品を受け取る必要がある。
大阪に足を運ばないと購入できない。それでも購入者の4割は首都圏在住者という。宮沢さんは「スーパー玉出の全国規模の人気に改めて驚いた。第2弾の企画も考えたい」と張り切っている。
購入の申し込みは9月末まで。価格は2000円で、バッグの中には大阪ならではの菓子が入っており、中身は買ってのお楽しみという。【小坂剛志】
