27日に始まった渡辺明名人(39)と藤井聡太王将(20)の第81期名人戦七番勝負第2局(毎日新聞社、朝日新聞社主催、大和証券グループ協賛)は、挑戦者の藤井王将が43手目を封じて1日目の戦いを終えた。渡辺名人が雁木(がんぎ)模様の将棋に誘導し、解説の澤田真吾七段(31)は「私の予想は角換わりだったが外れた。すぐに定跡から外れた進行になり、シリーズの流れとしては第1局からの流れのまま、力戦調の戦いが続いている。初日の形勢は互角。封じ手を含め、藤井王将がどんな構想を描いているかが注目です」と話した。
両者とも指し始めから小刻みに時間を使い、とりわけ藤井王将の▲7七角(13手目)から封じ手までは、渡辺名人の△9五同香(34手目)を除き、全ての指し手で1分以上の考慮時間が記録された。「角換わりの戦いだと中盤までノータイムの手がたくさん出るが、ノータイムの手がほとんどない序盤戦は珍しいですね」と澤田七段。「歩は駒台に乗っているが、決戦が起こった感じではない。ゆっくりした展開も最近では珍しい」と話した。
相居飛車の力戦。藤井王将は31手目に▲2六角と、角を右翼に転回した。これを見た渡辺名人はこの日最長となる1時間27分の長考で△9五歩と突っかけた。澤田七段はこの手に少し違和感を覚えたという。「控室でもまだ早いんじゃないかと言われていた。△4三金と先に上がり、▲3七桂を見て△9五歩と突くのもある。攻めと守りの香交換は攻める側(本局の場合は後手の渡辺名人)が有利なため、香交換にはならない。先手の出方を見てからいくのも考えられた」と解説した。
藤井王将の指し手で意外だったのは41手目の▲1五歩という。「まず浮かぶのが▲2九飛と引き、(7三にいる)角のラインを避ける手。これに対する後手の手も難しく、△1四歩と突かせたくないから▲1五歩と突いたかどうかは分からない」と話す。
渡辺名人が△9二飛と寄って、藤井王将が次の手を封じた。澤田七段は候補手として①▲2九飛②端を狙う▲1六香③▲3五歩(△同歩▲同角△3四歩▲2六角なら1歩を手持ちにできて先手満足)④陣形を膨らませる▲6六歩⑤玉を囲う7九玉――を挙げた。「7九玉は9筋に近づくので一番確率が低いとは思うが、手としてはあり得る。一番可能性が高いのは▲2九飛。一番穏やかで、マイナスが少ない手」と予想する。
その上で2日目の戦いについて、「封じ手によってその後の展開が変わるので、まず封じ手に注目したい。今後、藤井王将の側からは9筋の名人の香車を狙いに行く手もある。それとも直接相手の玉を狙う▲3五歩なのか。構想に注目したい」と結んだ。【新土居仁昌、丸山進】