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ロシアとウクライナ、助け合ってきたのに 「戦争誰のため」


 ロシアのウクライナ侵攻開始から1年。ウクライナ東部では激しい戦闘が継続しており、その他の多くの地域でもインフラ施設へのミサイル攻撃が繰り返されている。北陸3県にも戦禍を逃れてウクライナから避難してきた人たちがいる。また、戦争に反対し、ウクライナを支援するロシア人や日本人がいる。立場は異なるが、平和を希求する思いは変わらない。

「いつまで人殺す」電話も

 「1年も続いているなんて。そもそもロシア人とウクライナ人が戦争をしていること自体、全く理解できない」。富山市豊川町のロシア料理店「ボルガ」でシェフを務めるロシア人のエウゲニヤ・マカリナさん(50)は同じスラブ系民族の中で続く目を覆う大惨劇に憤りを隠さない。

 モスクワ出身のマカリナさんは調理専門学校で3年間の修業を積んだ後、1996年に来日した。富山市内のフランス料理店などで働き、2018年5月に「ボルガ」がオープンすると、シェフとして店を任された。富山に四半世紀以上住み、「富山人」を自称するが、つくる料理は祖国の本場の味だ。

 ウクライナ侵攻後、店には嫌がらせの電話が入るようになった。電話を受けた店のオーナー、小室徳幸さん(62)によると、「いつまで人を殺すんだ」などと怒鳴りつけるもので、小室さんは「私たちも同じ気持ちだ」と冷静に理解を求めたという。

 こうした状況を受けて、ボルガでは22年4月から「ウクライナ支援メニュー」をランチ(税別3500円)とディナー(同6000円)で用意し、売り上げの一部を避難民支援に寄付することにした。同年秋に国連児童基金(ユニセフ)を通して約12万円を寄付。メニューは現在も提供しており、4月にも第2弾の寄付をする予定だ。

 マカリナさんの母方の祖母はウクライナの出身で、自身はロシアとウクライナがソ連だった時代に10代を過ごした。「戦争まではお互い助け合って生きてきた。一体誰のための戦争なのか。あり得ない」と嘆いた。

「ただ時間が過ぎただけ」

 石川県輪島市の日本航空高校石川では、ウクライナから避難してきた3人の留学生が勉強や部活動に打ち込んでいる。ヴァレリア・ロトリエヴァさん(17)、マリア・リスキナさん(17)、ゲオルブ・ハバロフさん(16)は日本航空学園(山梨県)の避難者受け入れの取り組みを通じて、2022年6月以降に来日した。

 ロトリエヴァさんとリスキナさんは、ウクライナ北東部ハリコフの出身。母国では一緒に美術の勉強をしていたそうで、来日後は共に書道部に所属する。ハバロフさんは首都キーウ南方にあるビラツェルクヴァの出身。部活動ではダンスに打ち込んでいる。

 話題がロシアによる侵攻へと及ぶと明るかった3人の表情が曇った。ロトリエヴァさんは侵攻開始から1~2カ月後、母親を説得して避難を始めた。逃げる際、途中で爆発音を聞き、多くの人が避難しようとする様子を目撃したという。戦火は収まらず、3人は母国に残ったり、別の国に避難したりしている家族や友人と電話やSNSを通じて連絡を取り、励ます日々だ。

 侵攻から1年。ロトリエヴァさんは「何も状況は変わっていない。爆弾が落ち、たくさんの人が亡くなっている。時間がただ過ぎただけだ」と目に悲しみをたたえる。ハバロフさんの父親は戦地で負傷したという。侵攻により多くの人命が失われ、自身は大切な家族と離れて暮らすことを余儀なくされている。「生まれ育った母国を思わない日はない。でも将来のことも考えている」。大学進学で、東京に行くことを目指している。

 同校では、3人だけでなく、ナイジェリアやモンゴル、トンガなど世界中から来た留学生たちが学んでいる。来日後の暮らしについてロトリエヴァさんは「たくさんの国の人々や日本の人と出会えた。新しい文化と出会い、社会の一員となれてうれしい」と喜ぶ。将来は美術関係の仕事に就きたいそうだ。ハバロフさんは寮生活の中でたくさんの友達を作った。「日本語は今、一番頑張ることです」と意気込む。

 リスキナさんは書道について「とめ、はね、そのプロセスが楽しい」と目を輝かせる。異なる文化、価値観に囲まれて生活する中で、相互理解こそが平和の実現に大切だと話すリスキナさん。「戦争はお互いを理解し合えないから起こる。私はいろいろな国の人々を知っていきたい」

コンサートで子ども支援

 富山県南砺市の調律師、竹田時康さん(79)は同県内でのキエフ・バレエ団(現・ウクライナ国立バレエ団)の公演に関わった縁から、音楽を通じた支援活動を続けている。4月にも同国の子供たちを支援するチャリティーコンサートを開催予定で「一日も早く子供たちに笑顔が戻りますように」と祈る。

 竹田さんがボランティア活動を始めたのは1995年の阪神大震災。長男が兵庫県で調律の勉強をしていたことがあり、すぐに支援物資を積み込んでトラックを走らせた。2011年の東日本大震災でも支援物資を被災地に届けたほか、津波でピアノを流された小学校などにピアノを寄付してコンサートを開催するなどしてきた。

 1992年、自らも所属していた「砺波よい音楽を聴く会」が同バレエ団の公演を招へい。チケットは発売と同時に完売するほど注目を集めた。追加公演を交渉すると、世界的に著名なバレエ団にもかかわらず快諾、追加公演が実現した。舞台内容にもバレエ団の対応にも竹田さんは大きな感動を味わった。

 その大切な思い出を打ちのめすようなロシアの侵攻だった。仲間を集めて支援コンサートを昨年4月に同県砺波市で開催。同9月には同県高岡市の高岡龍谷高でのウクライナ支援コンサートにも協力。同国から日本に避難していたチェリストの母子らを招き、音楽で高校生に平和の尊さを呼びかけた。

 今、竹田さんらが特に心を痛めているのが子供たち。「戦争は子供たちの心に一生の傷を残す」との思いから、2回目の支援コンサートは子供の支援に特化することに。竹田さんは「我々にできることは微々たるものだが、何か少しでも役に立てば幸いです」と話す。

 「ウクライナのこども支援ヘリオス公演」(毎日新聞富山支局など後援)は4月8日午後2時、南砺市やかたの福野文化創造センター・ヘリオス(0763・22・1125)で。入場料一般3000円、小、中、高校生1000円。【深尾昭寛、萱原健一、青山郁子】

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