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「失われた30年」何を間違えたのか 経営トップが語り合った敗因


 バブル経済崩壊後、景気低迷が続いて「失われた30年」と言われる日本。変化を受け入れにくい社会構造が閉塞(へいそく)感を招いている。「ここで変わらなければ」と危機感を抱いた企業経営者らが集まり、互いに意見をぶつけた。30年間、我々は何を間違ってきたのか――。

 「日本の経営者は『中国の船は安かろう悪かろう。そのうち駄目になる』と思い、ライバルを知ろうとしなかった」。サノヤスホールディングス(HD)の上田孝会長は、造船で中国勢が伸長した2010年ごろを自戒を込めて振り返った。世界市場を中国勢に席巻された結果、同社は21年に祖業だった造船から撤退を余儀なくされた。

 経営者らは2月9、10両日、国立京都国際会館(京都市左京区)で開かれた第61回関西財界セミナーに集った。関西の企業経営者が国や地域、企業経営の在り方を議論する場だ。21年と22年は新型コロナウイルス禍でオンライン開催を余儀なくされた。3年ぶりに対面に戻った今回、議論のテーマの一つに「失われた30年」が選ばれた。

変化否定した「男性サラリーマン文化」

 何が長期低迷の要因だったのか。産業ガス大手エア・ウォーターの岸貞行会長付顧問は、その一つとして「男性サラリーマン文化」を挙げた。高度経済成長期の原動力だった男性中心の企業文化が根深く残り、「若い力を押さえ付けて『社会を変える』ことを否定してきた」。その結果、多様性の受け入れが遅れ、経済の停滞につながったと見込む。

 インターネットサービス大手のさくらインターネットを創業した田中邦裕社長は、バブル崩壊後の不良債権処理を経て経営者の考え方が守りに入ったと指摘。「コストをどんどん削って効率化して原価を下げることにこだわり、売上高を上げようとしなくなった」と述べた。

 経営トップが長期的な視点を持ちにくいという見方もあった。電源システム製造のユアサM&Bの松田憲二会長兼CEO(最高経営責任者)は「社長や会長の任期が短く、長期的な思考にならない」と実態を明かした。がんこフードサービスの志賀茂特別顧問は「リーダーを育てる教育制度が大事だ」と主張した。

行き過ぎた株主第一主義

 国の政策を巡っては、住友理工の西村義明特別顧問が企業統治改革を背景にした「株主第一主義」の行き過ぎに言及。従業員や取引先らが「コストとして認識」されるようになり「企業は(コストを)減らさざるを得ず、体力を弱めた。GDP(国内総生産)が伸び悩む中で賃金も上がらず、中間層が疲弊した」と社会に与えた影響に触れた。

 30年後の会社や経営の在り方についても議論が交わされた。

 過去30年はITの登場で世界の産業構造が一変した。オムロンの安藤聡取締役は「30年後にどういう社会が到来するかを構想して、経営をデザインし直す必要がある」と述べた。

 企業の将来を支え、変化を起こすのも人材となる。伊藤忠商事の鈴木善久副会長は「報酬を上げ、働きやすくすることで多様性を生み、新しい発想が生まれる土台になる」と述べ、人材の育成が企業にとって成長の鍵になるとの認識を示した。【井口彩、妹尾直道】

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