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「ミカンにカビが生えない段ボール」実現間近 鍵を握る繊維とは


 柑橘(かんきつ)王国・愛媛を「紙の技術」で支えたい--。愛媛県紙産業技術センター(四国中央市)は、温州ミカンなど柑橘の輸送時に使う段ボールや、個別包装用の不織布に抗菌剤を塗って抗菌・抗カビ効果を高める技術を生み出した。物流段階の柑橘の傷みを防ぐための決め手になるこの技術。ある「繊維」の働きが隠されている。

 同センターの加藤秀教(ひでのり)主任研究員によると、決め手は新しい繊維素材として注目されるセルロースナノファイバー(CNF)。原料は植物で、太さ数ナノメートル(ナノは10億分の1)の繊維が解きほぐされている。加藤さんらは物流時の段ボールの内側に抗菌剤を塗って腐敗やカビを防ごうと考えたが、塗り終えるまでに液体内で抗菌剤が沈降(沈殿)し、安定して付着しない課題がある。思いついたのがCNFの活用だった。

 図のように、抗菌剤が入った液は時間とともに抗菌剤が沈降するが、CNFを添加すると抗菌剤の沈降を防げることが分かった。CNFの微細な繊維のすき間に抗菌剤がからみつくためだ。

 抗菌剤、塗工用接着剤とCNFで構成する液でCNFの割合を変えて実験したところ、CNFを重量比で7・7~8・3%として段ボールに塗ると、粒子状の抗菌剤が均一に付着することが電子顕微鏡で確認できた。抗菌剤は銀イオンの抗菌原理を生かした米食品医薬品局(FDA)認可製品を使った。

 センターは四国中央市の紙関連製品専門商社「カミ商事」と共同で段ボールの製造過程で抗菌剤を塗った製品を試作。CNFを使わない場合は塗る作業が始まって15分ほどで抗菌剤の付着量は3割ほど落ちたが、CNFを使った場合は時間が経過しても抗菌剤付着量にほぼ変化はなかった。

 輸送時のカビ、腐敗を防ぐことは特にブランド品の高級柑橘では絶対の条件となる。このためセンターは個別包装用の不織布でもCNFを加えた抗菌剤処理を施し、同様の結果を得た。さらに、抗カビ効果を確かめるために、実際にミカンにできたカビを培養した培地に、抗菌剤を塗った段ボールと塗らないものを置き、2日後を調べた。その結果、抗菌剤を塗った段ボールの周りにはカビは見られず、抗カビ効果が確認できたという。

 愛媛県は2016年度から食品、繊維、紙産業、複合材料などの分野でCNFの研究・試作を続けている。今回は紙産業の技術で特産の柑橘を支援する試みだ。加藤さんは「今後も柑橘の輸送時を想定した実証試験を重ね、役立てることができれば」と話している。【松倉展人】

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