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謎めいた宇宙の町バイコヌール、旧ソ連栄光の遺物


【バイコヌールAFP=時事】中央アジア・カザフスタン北部の荒涼とした大草原の中にたたずむ、秘密めいた小都市バイコヌール。廃虚と化した遊園地のそばを歩きながら、かつて都市建設を指揮したマリク・ムタリエフさん(67)は「この町はさまざまなことを乗り越えてきた。ペレストロイカ、ソビエト連邦の崩壊、電力不足──全て経験した」と語った。(写真はカザフスタン・バイコヌールに立つ、宇宙をテーマにした壁画が描かれた集合住宅) 町は旧ソ連の誇る宇宙計画の栄華の舞台となったバイコヌール宇宙基地と共に建設され、当初「サイト10」と呼ばれた。やがて革命指導者ウラジーミル・レーニンにちなんでレニンスクと名付けられ、後に宇宙基地の名を取ってバイコヌールに改名した。 約30キロ離れた宇宙基地からは、1957年に世界初の人工衛星「スプートニク」が打ち上げられ、ユーリ・ガガーリンが人類初の宇宙飛行へと旅立った。ワレンチナ・テレシコワが女性として初めて宇宙へ向かったのも、ここからだった。 旧ソ連崩壊から30年がたった今も、バイコヌールは特に国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行の主要基地として現役だ。8日には、実業家の前澤友作氏ら日本人観光客2人がISSへと飛び立った。「全て、世代を超えて多くの仕事をしてきた人々の功績だ」とムタリエフさん。 シルダリヤ川のほとりに1955年、旧ソ連が宇宙基地建設に携わる労働者の拠点を建設したのが町の始まりだ。その後、宇宙開発に従事する軍人とその家族の暮らす町として拡張されていった。 教師のオクサナ・スリビナさんは「いわゆるエリートがいた頃を覚えている。高等教育を受けた人たちがたくさんいた」と話した。スリビナさんも、父親が軍の仕事でこの町に赴任したため引っ越してきた一人だ。■町を去る若者 1991年に旧ソ連が崩壊すると、バイコヌールはカザフスタン領となった。将来に不安を覚えた住民は、一斉に家を捨てて町を去った。 町は現在、ロシアが2050年までの契約でカザフスタンから租借している。市内ではロシア語とカザフ語の両方が使われ、両国の通貨が流通する。 「私たちが目指したのは、町を崩壊させることなく将来の発展のため維持することだった。なんとかできたと思う」とムタリエフさんは言う。 町にはそこかしこに宇宙が息づいている。通りは旧ソ連の宇宙飛行士の名前を冠し、建物は宇宙をテーマにしたアートで飾られ、市内各所に国民的英雄ガガーリンやロケットや技術者の記念碑が立っている。 人口約7万6000人のバイコヌールには、旧ソ連時代の建築や都市計画の遺物が良好な状態で保存されている。まるで時が止まったかのように。 若い世代は、自分たちの将来を別の場所に見ている。ゲオルギー・イリンさん(21)は、「大勢が去っていく。親は給料がいいから残るけれど、子どもはロシアなどへ行くのが普通だ」と語った。イリンさんも大学進学のため町を出る予定だ。高校を卒業したものの「ここには勉強する場所がない」からだ。 ムタリエフさんも、若者たちにとってバイコヌールには「何の将来性もない」ことを認める。しかし、8日の前澤氏らが乗ったロケットの打ち上げでロシアが急成長中の宇宙観光業に再参入したことで、今「休眠中」の町が活性化されると期待を寄せている。【翻訳編集AFPBBNews】〔AFP=時事〕(2021/12/14-12:28)
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