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本塁打生む「剛と柔」=大谷の打撃フォーム分析―筑波大・川村准教授


 ア・リーグ本塁打王の座を最後まで争ったエンゼルスの大谷。周囲の想像を超えた活躍の要因を、筑波大で野球コーチング論を研究し、約1000人の打撃フォームを分析してきた川村卓准教授(51)=野球部監督=に解説してもらった。  ▽振り上げるスイング  大谷の打ち方で特徴的なのが、バットを下から振り上げる動き。打球に高い角度がつき、「ボールをすくい上げられることが本塁打が増えた要因」と指摘する。  特にシーズン序盤は、低めの球をスタンドに運んでいた。ただ、決して簡単にできることではない。「重たいバットを振る時に重力に逆らうことになるので、相当な力がいる」。頭をほとんど動かさずに体重移動し、のけぞるような体勢になることでボールを下から捉える。この点は、大リーグでプレーを始めた2018年から明らかに変化した。  一般的に、日本人選手は他のメジャーリーガーと比べ、背中や尻周り、太もも裏の筋肉が弱いとされる。大谷はこれらが発達しており、「最後にぐっと支える」ことができる。左膝の古傷が癒えたのも大きい。  大谷のフォームを可能とするのは単なる力強さではない。振り上げるスイングでは、ボールを捉えるポイントが小さくなる。投球の軌道に沿うようにバットを水平に走らせる打者と比べ、「線ではなく点で捉えるようになる。振り始めで素早くバットを出せるようにして、なおかつスイングスピードを上げていく難しい技術が必要」という。  ▽二刀流もプラスに  投手との二刀流に挑戦する大谷だからこそ持つ「肩甲骨の周りや上半身の柔らかさ」もある。特に生かされるのが、テークバックからスイングを始めるところにかけて。左肘を下ろしても、同時に左肩が下がることなく、「効率良くバットを出せるところが特長で、他の選手にはまねできない」。振り上げながらもコンパクトさを失わないため、大リーグで多く投じられる、手元で鋭く変化する速球にも対応できる。  二刀流の影響は他にも。右投げ左打ちの大谷は、投球と打撃の動作で回旋が逆になる。「ゆがみを自然に取ってくれる形で二刀流は機能しているかもしれない」。一方向の動きを繰り返すことによる重心の偏りを防いでいるとみられる。  ▽長年の体づくり結実  日本ハムでルーキーイヤーを過ごした後のオフ。大谷は川村准教授を訪ね、体の使い方などを学んだ。体づくりへの意識はひときわ高く、野球選手のピークとされる20代後半に向けて計画的に、強さと機能性、剛柔併せ持つ肉体に仕上げた。「単純に去年から今年が変わったわけではなくて、プロ野球選手になってから体をつくっていった成果が今出ている」。長年の積み重ねが結実したシーズンだった。  ◇川村准教授の略歴  川村 卓(かわむら・たかし)札幌開成高3年時に主将として夏の甲子園出場。筑波大でも主将を務めた。大学院体育研究科(当時)修了後、北海道・浜頓別高監督を経て、01年から筑波大監督。専門は野球コーチング論。51歳。北海道出身。 【時事通信社】 〔写真説明〕低めの球をすくい上げ、ソロ本塁打を放つ大谷=6月28日、ニューヨーク(EPA時事) 〔写真説明〕川村卓 筑波大学硬式野球部監督 〔写真説明〕タイガース戦の8回、40号ソロ本塁打を放つエンゼルスの大谷翔平(連続写真)=8月18日、デトロイト
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