地中海原産の中高木、オリーブ。
オリーブオイルや果実のオイル漬けなど、日本でもポピュラーとなった食材のひとつです。丈夫で美しい姿が庭木の定番でもあり、西日本以西の暖地ではシンボルツリーとしても人気です。寒さに弱いと言われていますが、雪の降る地域でも鉢植えや観葉植物として楽しめますよ。
今回は、そんなオリーブの楽しみ方と育て方を解説します。
育てやすいだけじゃない、魅力たっぷりのオリーブ
葉表の深い緑と葉裏のシルバーが魅せる、絶妙なシルバーグレーのフォルムが美しいオリーブ。
自然樹形は暴れすぎずナチュラルで、また刈り込んでトピアリー風にすればデザイン的で端整なイメージに。さらには、時の流れを感じる太い幹の古木オリーブも人気です。かっこいい庭にもナチュラル庭にもよく合い、丈夫で育てやすいだけでなく、奥深い魅力が詰まった植物です。
オリーブとはどんな植物?
オリーブは地中海沿岸原産で、約6000年ほどから栽培されてきました。寿命が長く、ギリシャには樹齢約5000年といわれる古木もあります。
常緑樹で、6月頃開花し、10~11月頃に実が熟します。果実はそのままでは食べられず、渋抜きしてオイル漬けにしたり、果肉の油分を絞ってオリーブオイルにします。
自家不結実性なので、実をつけるには2品種以上一緒に育てます。
どんな庭におすすめ?
洋風の庭によく似合います。
本来は10mほどにもなる植物ですが剪定で調節しやすく、場所に合うように育てやすいのも特徴です。萌芽力も強く丈夫なので、剪定は初心者でも難しくありません。
多少の寒さには耐え、 -5℃以下の日が4日以上続かないような地域で地植えができます 。雪が連日積もるような地域では、室内に取り込めるように鉢植えがおすすめです。
鉢植えでも楽しめる?
オリーブは、鉢植えでも長く楽しめます。成長の早い植物だと、植え替えをするたびに大きくなってしまってどうしよう…ということもありますよね。その点オリーブは剪定に強いので、小さく仕立てながら楽しむこともできます。
また、オリーブは鉢植えとの相性も楽しめます。
素焼きの鉢に植えてイングリッシュガーデンスタイルに、グレーのスタイリッシュな鉢に植えれば北欧風に、黒のコンテナに植えればかっこよくモダンな印象に。どんなスタイルにも合わせやすく、雰囲気を変えられるのも魅力です。
室内でも楽しめる?
観葉植物として
主張しすぎないシックな葉色がインテリアにもよく映えるので、観葉植物としても人気です。苗の大きさも3~10号くらいと豊富なので、部屋に合ったものを見つけやすいでしょう。
ただし実も楽しみたいなら2品種以上を一緒に育てることをお忘れなく。風でも受粉しますが、開花期にはベランダに出しておくと結実しやすくなりますよ。
盆栽として
剪定のしやすさ、枝の調整のしやすさや丈夫さから、盆栽としても楽しめます。
特に盆栽向きの小さい葉の品種を使ったオリーブ盆栽がよく出回り、初心者でも挑戦しやすいことから体験教室なども開催されます。小さい苗を買って自分で仕立ててみるのも楽しいかも。
基本の性質と育て方
ここからは、オリーブの基本の性質と育て方を紹介します。
オリーブは花屋や園芸店、植木屋やホームセンターなどで購入できます。小さな3号ポットの苗から庭木用の大きなものまで、さまざまなタイプが販売されています。価格は3号で500~1,000円ほど、古木になると10万円以上するものもあります。
日当たり
日当たりの良さが大切で、基本的には 1日5時間以上日光がしっかり当たる場所 がおすすめ。
寒さにとても強いわけではありませんが、成長していれば、寒波などで1日くらい-5℃を下回るようなことがあっても耐えられます。ただし小さい苗は寒さには注意しましょう。同時に、 冬の平均気温が10℃以下でなければ花芽がつきにくくなるので気をつけてくださいね。
水やり
乾燥に強いイメージがありますが、水は大好きです。
多少の水切れでは枯れることはそうそうないですが、鉢植えでは乾いたら鉢の下から水が出るぐらいたっぷりと水やりします。乾燥に強いからと水やりを控えると調子が悪くなりやすいので気をつけましょう。
地植えでは水やりはほとんど必要ありません。
土と肥料
水はけがよくかつ水持ちのいい、 肥沃な土 を好みます。
水はけと水持ちは相反するようですが、余分な水分を排出しつつ土の中にはたっぷり空気と水分を含む土が理想です。市販の培養土か、赤玉土7:腐葉土3の割合の用土を使います。
肥料は2月と10月に有機肥料か緩効性肥料を、鉢植えの場合は開花後の6月にも施肥します。
植え替え
生命力が強く、根を切ってしまっても再生してくれやすいオリーブ。大きくしたくない場合の植え替えも比較的簡単です。
適期は3~5月頃ですが、真冬でなければほぼ年中植え替えをすることができます。ただ、根を大幅に切るような植え替えはやはり春がいいでしょう。
根を切るときは、根を切った分と同じだけ枝も剪定すると株の負担が減り、枯れるなどのリスクを抑えられます。
病害虫
オリーブにはオリーブアナアキゾウムシという天敵がいます。
成虫が卵を産み付け、孵化した幼虫が幹の内部を食い荒らすのが特徴です。表面には見えにくいため発見が遅れ、オリーブが急に枯れてしまうということも。木の根元に穴が空いておがくずのようなものが出ていたら、幼虫がいる証拠です。
穴を針金で掻き出して幼虫を捕殺するか、穴の中にスミチオンなどの薬剤を散布します。ただし実を収穫する場合は、薬剤を散布する時期に注意してください。
ほかには、ハマキムシや梢枯病などが見られます。
剪定とお手入れ
切り戻し剪定は2~3月頃が適期。
平均気温が15℃以上になると花芽をつけるので、その前に行うのがベスト です。ただし、樹形を乱すような不要枝や混み合った枝を間引く剪定は、適宜行っても大丈夫です。
ひょろひょろなオリーブの幹を太くしたい・枝数を増やしてボリュームをよくしたい場合は、葉を残して枝を半分くらいに切り戻します。切った部分から二手に分かれて新梢が伸びていく姿を想像しながら、樹形を整えていきましょう。
室内の日当たり
日光がしっかり差し込むような場所に置きます。どうしても日照が少ない場合は、定期的にベランダなどで日光浴をさせてあげるといいでしょう。
実をつけたいのであれば、冬は暖房の当たらない場所で一定の寒さにあて、2品種以上を一緒に育てます 。
室内で育てる注意点
観葉植物の調子が悪くなる原因は、水やりがうまくいっていないケースが多く見られます。
特に室内の水やりは部屋が汚れないようにと、一度にあげる水の量が少なくなりがち。水やりはベランダなどに出して、鉢底からたっぷり水が出るくらい水をあげるのがベストです。
また頻度はケースバイケースで、エアコンなどの環境によっても違います。
水やりの目安は「土の表面が乾いてきたらたっぷりと」が基本 です。
育てるほどに楽しいオリーブ
オリーブは丈夫で初心者でも育てやすい植物ですが、育て方は無限大!剪定がしやすいので、初めて剪定に挑戦する人のファーストステップとしてもおすすめです。小さな苗から自分好みに育てられる上、仕立て方で個性も出せる奥深い魅力があります。
人気の植物なのでどこでも手に入りますし、日本一の名産地・香川県のふるさと納税などでも購入できますよ。
ぜひ気軽にチャレンジしてみてくださいね。
しまうま
余暇プランナー
田舎暮らしの30代フリーライター。イングリッシュガーデンやオージーガーデンが好きな2児の母です。花屋と園芸店で勤務経験があり、今はガーデンデザインの勉強中。最近ついにマイガーデンに着手し、ゆる〜くかつ素敵なお庭を作るべく、日々試行錯誤しています。かっこよくて魅力的なネイティブプランツや、のびのび育つのに繊細なフォルムのハーブや花々が好き。リアルな庭作りの情報をお届けしたいと思います。