ひとくちに「幸福」といっても、実は「幸福な人生」と「意味のある人生」の2つの要素で分けることが出来るのですが、両者は同時に成り立たない場合も多いことはご存知ですか?今回は関連する研究の紹介とともに、両立させるためのヒントもご紹介していきましょう。
「WILLPOWER 意志力の科学」で知られるロイ・バウマイスター博士の2013年論文(1)を扱います。
「幸福感」と「人生の意味」は両立しないことが多い
研究チームは、まず400人の男女に調査紙を配布し、数週間にわたって日々の「幸福感レベル」を記録してもらいました。そのうえで、全員に対して「人生にどれだけの意味を感じているか?」を質問。すべてをまとめて分析したそうです。
その結果は、
・確かに「幸福感」と「人生の意味」には強い関連がある。
・ただし、幸福感が高いからといって、人生の意味を感じられるわけではない。
・同じように、人生の意味を感じているからといって、幸福感が高まるわけでもない。
というもの。「幸福感」と「人生の意味」は同時に成り立たないケースも多いということがわかりました。
そこで、研究チームは両者の違いを確かめるべくデータを再チェック。全員の日々の活動や感情の動きを精査していったところ、
・「幸福感」を持つためには、「人生の困難やトラブルから自由であること」と、「人生を簡単で楽しいものだと感じられること」の2つが重要。
・ただし、この2つは「人生の意味」とは関係がない。
といった事実が明らかになったそうです。喜びを感じたり良い気分になったとしても、人生の空虚さは埋まらない可能性が高いわけですね。パーティで徹夜して楽しく遊びまわったはいいけれど、朝日を浴びたら急にむなしくなってしまう・・みたいな。
幸福は金で買えるが人生の意味は金では買えない
ここでおもしろいのが、この論文では「幸福は金で買える!」と結論づけてるところ。なんでも、
・ほしい物を買うだけのお金がある人のほうが、確実に「幸福感」は高い
・ただし、いくら金を持とうが「人生の意味」に差は出ない
といった傾向がハッキリ出たんだそうです。
この結果は、バージニア大学の大石繁宏
「幸福感」と「人生の意味」を両立させるには?
そうすると、「幸福感と人生の意味を両立させる方法はないの?」と思うわけですが、バウマイスター博士の論文によれば、「人間関係の改善」で両立が出来ると伝えます。「幸せには友だちが大事!」というのは、幸福の4因子の研究とも近いところがありますね。
また、他人とのつながり関してはより突っ込んだ分析も2つあります。ひとつが「GIVE &TAKE 『与える人』こそ成功する時代 」でアダム・グラントさんが提唱した、ギバーとテイカーの概念。意外にもギバー(他人に多くを与えようとするタイプ)の人は「幸福度」が低く、そのかわりテイカー(他人から利益を得ようとするタイプ)よりも「人生の意味」を感じる傾向が強かったそうです。
そしてもうひとつが人間関係の時間と密度で、
・友人と密度の高い時間を過ごすと「幸福感」はあがるが「人生の意味」はあがらない
・家族と長い時間を過ごすと「幸福感」はあがらないが「人生の意味」はあがる
といった傾向があったそうです。
友人と過ごす場合は時間よりも密度が大事で、逆に家族と過ごす場合は密度よりも時間が大事といった感じでしょうか。このあたりは、「友人とは雑談よりも深い話の量を多くしたほうが幸福感は増す」っていうアリゾナ大の結論と似てますね。
まとめ
以上の話をまとめますと、
・幸福には「幸福感」と「人生の意味」の2つの要素がある
・「幸福感」は、自分が欲しい物や環境を手に入れたときに得られやすい
・「人生の意味」は、他人に何かを与えたり、何かに向って犠牲を払った時に得られやすい
・「幸福感」と「人生の意味」は両立しないケースが多い
・「幸福感」と「人生の意味」を両立させるには人間関係が大事
といったところでしょうか。「人間関係を大事にしましょう」と勧められてはいますが、ギバーでいるかテイカーでいるか、友人との密度の高い時間を大事にするか、家族との時間を大事にするかなど、「幸福感」と「人生の意味」の両立にはなかなかのバランス感覚が求められそうな感じです。目の前の”幸福”を追い求めた結果、あとから「人生の意味」を感じられなくなるということもありえます。こちらの記事(10年後と1年の目標は同時に考える―科学的にベストな年間目標の立て方【実践幸福学】)のように、長期的な目標を意識して、今を生きることもやはり重要ですね。
Photo:Aquí estamos, compañeira…By xindilo
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