■超年上彼との結婚に親が大反対
「親が反対するのも理解はできるんです。私の場合、わかりやすい反対理由があるので」
苦笑しながらそう言うのは、ミツコさん(32歳)だ。相手は30歳年上の会社経営者。とはいえ、「それほどお金持ちではありません」とのことだ。
2年ほど前、仕事上のパーティで彼と知り合い、すぐに食事に誘われた。別の日に食事に応じたら、彼は完璧なまでのレディーファースト。すっかり心奪われたという。
「形だけじゃないんです。私の話をおもしろそうに聞いてくれる。彼自身、経験も知識も豊富で話題が多岐にわたる。それでいてまったく上からものを言うことがないんです。あんなに柔軟な男性を見たことがありません」
見た目も還暦を超えているとは思えないほどダンディなのだとか。今もテニスやスカッシュをする外見も内面も若い男性なのだ。
「実は、うちの親より彼のほうが年上なんですよね。結婚したい人がいると言って、レストランで彼を両親に会わせたんですが、両親はあっけにとられていました。もちろん、彼が丁寧に知り合った経緯やどういうつきあいをしているかを説明して結婚したいと言ってくれたんですが、ともかく両親は話も耳に入らなかったみたいです」
彼には離婚歴が2度ある。それぞれの結婚で子どもがふたりずつ計4人いる。もう全員、成人して独立しているのだが、子どもがいることも両親にとっては心配のタネのようだ。
「彼の離婚した奥さんたちも彼を恨んでいるわけではないみたいだし、4人の子どもたちにも会いました。みんな、『オヤジはついにこんな若い女性を』と笑っていましたね。家族がある程度の距離を保ちつつオープンな感じで好感をもちました」
そのことを話しても、ミツコさんの親はまだ大反対。大きな理由としては、順番でいけば夫が先に亡くなる。その後、娘はきっと苦労するという想像だ。
「おもしろいんですが、彼の4人のお子さんたち、誰も彼の会社に就職していないんですよ。彼がいなくなれば会社は彼が育ててきた人たちが守ってくれるはずと彼も言っています。財産争いなんて起こらないだろうし、彼はそのあたりはきちんと遺書を作ると言ってる」
親の心配はわかるけれど、彼女は自分の意志も通したい。その狭間で悩んでいるミツコさんだが、親の反対を押し切る覚悟を固めつつあるという。
■年下で無職の彼
一方で、年下・無職の彼とくれば、これまた周囲は反対することが目に見えている。
「彼は8歳年下、芝居に夢中でアルバイト生活です。三畳一間の生活だったので、今は私のアパートに越してきました。私たちはいつ婚姻届を出してもいいんですが、親が反対しているんです」
そう言うのはナツキさん(33歳)。友だちに誘われて彼の出る芝居を観に行き、すっかりその劇団が気に入って通うようになった。そのうち彼とも話すようになって距離が縮まったのだという。
「彼は劇団にいながら、他の劇団の芝居にも出るくらい芝居好き。でもお金にならないのも確かなんですよね。合間にはアルバイトをしていますが、どんなにがんばっても月に10万にはなりません」
彼女が彼と結婚したいと思ったのは、彼を扶養家族にできるから。彼女からプロポーズした。彼は「ナツキと一緒に暮らせて、しかも芝居を続けられるなんてオレは幸せ者だ」と泣いた。
ところがいざ親に話すと大反対。反対するのももちろん、ナツキさんは想定済みだった。
「親にしてみればそうですよね。でも私は彼の才能と人柄に賭けたんです」
大反対を押し切って、つい先日、婚姻届を出した。収入を考えると、もしかしたら妊娠のチャンスもないかもしれない。だがそれでもいいと彼女は思っている。
「彼は稽古とアルバイトの合間に、家の掃除をしたり簡単な夕飯を作っておいてくれたり。お互いにありがたいなと思って暮らしています。両親には、『そのうち嫌になるから、飽きるまでやってみればいい』と突き放されました。彼ががんばっている限り、私もがんばれると思います」
親の反対を押し切って結婚しても、あるいは反対意見を聞いて結婚しなくても、最終的に幸せな人生だったかどうかは死ぬまでわからない。結婚はゴールではないのだから。