「先生、出ちゃいました。痛くて仕事になりません」
そう言いながら木下さん(仮名、36歳、男性)が片足を引きずりながら診察室に入ってきました。表情はいかにも険しく、痛さがこちらにも伝わってきます。
診察すると、右足の親指の付け根が赤く腫れています。ブヨブヨと関節液が溜まっており、軽く触れただけで「ウッ、痛ッ!」と木下さんの表情が歪みます。
血液検査の結果は尿酸値8.2mg/dL。高尿酸血症にともなう急性痛風関節炎、いわゆる痛風発作の診断です。そのあまりの痛さに、歩くのもままならない様子。メーカーの営業マンの木下さんですが、通勤するのが精一杯で、外回りの営業は同僚に頼んでいるとのこと。
尿酸値を下げる薬は毎日ちゃんと飲んでいたのですが、このところの猛暑の中も営業に忙しく、水分摂取が不足気味だったようです。仕事終わりのビールも進んでいました。
体内に溜まった尿酸は、尿と一緒に排出されます。炎天下、大量の汗をかいて、尿の量が減ると尿酸が体に溜まりやすくなります。尿酸値が上昇し、溶けきれなくなった尿酸は結晶となって関節内に析出します。これが痛風発作の原因です。
尿酸の結晶は針のように鋭く、関節を内側からチクチク痛めつけます。一般的に足の親指の付け根や、くるぶしに発症することが多く、営業マンの木下さんの足にも小さな尿酸の結晶が牙を剥いたのでした。
いったん痛風発作が出てしまうと、炎症が落ち着くまでは鎮痛剤で痛みを抑えるしか治療法がありません。水分をしっかり摂取して、尿酸が尿へ溶け出ていくのを待つのみです。
木下さんのように尿酸を下げる薬を飲んでいても、夏場の脱水を契機に痛風発作が起こることがあります。熱中症対策も大切ですが、痛風予防のためにもしっかり水分摂取して、食べすぎにも注意して暑い夏を乗り切りたいものですね。
【Dr.山村・診療情報】
「上大崎クリニック」
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