新車や中古車を買うと、だいたいの場合、販売店のステッカーが貼られて来る。「ディーラーステッカーなんてダサい!」と思う人が多いからか、とくに国産車ディーラーのステッカーは年々小さく、また目立たないデザインになってきている。また、貼るのを嫌がってはがす人も少なくないだろう。車庫証明は仕方ないとして、燃費基準ステッカーと同様、貼っても貼らなくても良いステッカーゆえ、嫌だと思えばはがせばよいのである。
神奈川県内のとあるディーラーの営業マンは、
「近年は、ステッカーを嫌がるお客様が増えましたね。販売店名の入ったステッカーはもちろん、低排出ガス車ステッカーや、燃費基準達成車も同様です。販売店のステッカーはほとんどが宣伝のために貼らせていただいているわけです。予約なしで入庫されたときなどに、すぐにどこの販売店の車かわかるというメリットもありますが、それも調べればすぐわかることですし。不要と言えば不要でしょう。なので、どのディーラーでも年々小さく、目立たない色合い、またスタイリッシュなデザインになってきていると思います」
■貼りたくない理由は「リアビューの美観を損ねるから」
ステッカーをはがしたい、貼りたくない、ダサいと思っている車好きの友人数名に聞いてみたところ、「後姿が美しくないからはがしたい」という。「リアビューが気に入って買った車なのに、変なロゴの蛍光色みたいなステッカーを貼られて最悪。すぐはがした」という友人もいた。確かにそれはわかる。単なるディーラーの宣伝目的のために貼っているなら、気の毒だと言えるだろう。はがして正解だ。
アメリカの場合はどうだろうか?アメリカでもディーラーステッカーは存在するが、ライセンスプレートのフレームにディーラー名が入ったものがポピュラーだ。なかなかカッコいいし、これなら美観を損ねることもなさそうだ。電話番号が入っているあたり、宣伝の意味が強い印象ではあるがデザイン的には良い感じ。
日本の話に戻そう。車好きのステッカー離れが進む中、非常に目立つ色とデザインで、大きさもかなり大きめで、当初より変わってない(むしろ大きくなっている)、車によって貼られる場所も厳密に決まっていて、ステイタス性もあり、貼ってあるだけで査定額が上がるステッカーがあるのをご存知だろうか?
YANASEのステッカーがそれである。
■「YANASE」の黄色いステッカーの意味
ヤナセの黄色いステッカーは1972年にヤナセ扱いの車すべてに貼られるようになった。実はそれ以前からヤナセステッカーは存在していたが、現在と基本デザインが変わらないおなじみの黄色に青文字のステッカーに統一されたのが72年だった。その後91年には縦横5ミリずつ大きくなりラミネート加工が施され、より耐久性がある素材が使われるようになった。
そしてこのステッカーには、一般のディーラーステッカーとは異なる、ヤナセステッカーならではの深い意味が込められている。(ヤナセ車オーナーなら一度は聞いたことがあるかもしれないが)、実は敢えて目立つデザインとサイズ、そして貼る場所も原則としてリアウィンドウの下中央と目立つ場所に指定されている。この意味は、「ヤナセのステッカーを貼った車が故障などトラブルで立ち往生しているところにヤナセの社員が遭遇した時に、お客様にお声がけして何かしら手助けができるように」という思いが込められているのだ。それゆえ、遠くからでもわかりやすいデザインと貼る場所となっているわけだ。発案者はヤナセを日本一の輸入車ディーラーに育てた故・梁瀬次郎氏である。ステッカーは正規輸入車をアピールするものでもなければ、ヤナセの宣伝のためでもなかった。
■貼る場所も車種によって厳密に決められている!?
実は、ヤナセステッカーを貼る場所は車種ごとに厳密に決まっている。例えばカブリオレなどの車種はリアウィンドウに貼るとオープンにしたときに見えなくなってしまうため、別の場所に貼られている。また、リアワイパーが干渉したり、視界を妨げたりする車の場合も違う場所になる。安全性はもちろん、見た目にわかりやすい場所であること、そしてリアビュー全体のデザインまでを考慮してトータルでベストな場所を決めているのだ。
ちなみにヤナセステッカーを貼った車は中古車市場でも高値で取引されているそうだ。同じ正規輸入された車でもヤナセでメンテナンスを受けて来た車とそれ以外とでは、実際、大小さまざまな違いが出てくる。オーナーの満足度も異なる印象だ。中古車の査定額が変わるのも当然と言えるだろう。
というわけで、ヤナセステッカーだけははがさない方が賢明と言えそうだ。