「妻が更年期でイライラが止まらない。触らぬ神に祟りなしだよね」と言う男たちの多いこと。一方で妻たちは、「夫にも一緒に病院に行ってほしい」と思う人もいれば、「知らん顔していてほしい」と言う人までさまざま。まずは妻が何を望んでいるのか、夫たちは把握しておいたほうがよさそうだ。
■病院通いが日課になって
40代後半になって、急に心身ともに「ガタがきた」というのは、ミホコさん(50歳)。肩こり、頭痛、倦怠感と更年期症状が一気に押し寄せてきたそうだ。
「最初は別の病気かと思って焦ったんですが、更年期の症状だとわかりました。今はホルモン療法で少し落ち着きましたが、それでもメンタルはダメ。すぐ落ち込むし、今までの人生を振り返ったりして、どんどん自己評価が下がってる」
自己分析ができるのだから大丈夫だと思うが、彼女のストレスの矛先は夫に向かう。
「私が病気かもしれないと病院通いをしているときも、夫は『大丈夫か?』と言うだけで、心配しているのかいないのか。その態度にいちいちムカッとしてしまう。たまには一緒に病院に来てくれてもいいのに、という思いもありました」
全然心配してないでしょと夫に詰め寄ると、心配してるよという答え。だが、そこに心がこもっていないとミホコさんは腹立たしかったという。
「独身の友人が、『結局、それって甘えじゃない? 私なんて何があってもひとりで対処するしかないんだから』って。それを聞いてまたムッとして」
怒りの連鎖が止まらなかったそうだ。独身の友人の言うことにも一理あるが、身近な夫が心配もしてくれないと怒るミホコさんの気持ちも理解はできる。
「具合が悪いときに寄り添ってこその夫婦だと思うんですけどね」
心身不調は本人がいちばん不安なのだ。夫はもう少し妻の話を聞いてもいいかもしれない。
■放っておいてほしい妻の気持ち
一方で「心配されるより、放っておいてほしい」と言うのは、マリさん(52歳)だ。数年前から、自分でも気持ちが不安定だと気づいている。
「どこかが痛いとか具合が悪いわけではないけど、精神状態が不安定。前なら見過ごしたことが、見過ごせずにイライラしちゃう」
高校生のひとり息子は、当たらず触らず接してくれるので平常心でいられるが、心配性の夫にはよけいにイラッとさせられるのだろう。
「夫は昔から心配性なんです。それがありがたかった時期もあるけど、今は放っておいてほしいのが本音。朝、私がちょっとでもイラッとしていると、その日、何度も『気分はどう? 医者行った?』ってメッセージが来るんです。放っておくと、電話がかかってくる。『よかった、出てくれて。倒れてるんじゃないかと思ってた』って。本気で心配しているからむげにもできないし、放っておいてと強く言うこともできなくて。さらにストレスがたまるという日々です」
時間があれば病院にもついてくるし、週末は家事もやってくれる。そんな夫に感謝してはいるが、あまり病人扱いされると、どんどん気持ちが弱くなっていくという自覚もある。
どんな場合も、当事者が何を求めているのかを知ることが大事。男性にも更年期があるが、一般的には女性ほど急激に訪れるわけではないので本人の受け止め方が違う。夫はまず妻の話を聞き、何を望んでいるのかを把握したほうがよさそうだ。