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ひきこもりの人たちは「発達障害」や「精神疾患」なのか?


「ひきこもり」という表現が一般的になって約20年。最新の調査では「ひきこもり」人口は100万人を数え、そのうちの60万以上は40歳~64歳。7年以上ひきこもっている人も半数以上と、ひきこもりの「長期化」「高齢化」が進んでいます。私たちは「ひきこもり」とどう向き合えばいいのか? 解決策はあるのか? 多くの当事者、家族に取材を重ねたノンフィクションライター亀山早苗が「ひきこもりのリアル」に迫ります。



 





【ひきこもる人たち Vol.03】「自己肯定感」には2種類ある



 



ひきこもり当事者と話していて、どうしてそれほど自己評価が低いのか、そもそもどうしてそれほど自分の存在に点数をつけたがるのかがわからなかった。だがある当事者と話していて、ようやくわかったことがある。



 



 



■「ここにいていい」という肯定感



 



彼らは一度も親に褒められずに育った。私自身を振り返ると、褒められて育ったという記憶はないが、「ダメな子」と言われた記憶もない。ただ、何かいいことがあると一緒になって「よかったね」と言ってもらったような気はする。少なくとも、産まれてきたことを否定されたことはない。なぜなら産んだのは親のほうだからだ。子を否定することは親にとっても本来、自分を否定することにも通底するはずだ。





ところがひきこもりの多くは、親に褒められて育っていない。それどころか言葉で、あるいは無言のメッセージで「おまえなんかいないほうがよかった」と刷り込まれているのだ。





たとえばテストで90点をとっても、「どうして100点がとれないの」と言われる。そうなると常に親を満足させられない自分はダメだと思い込んでしまう。それが続くと、「ここにいていいのかいけないのかがわからなくなる」そうだ。つまり、存在そのものが否定されているような気になっていく。





親としては、より向上心を持ってほしいという願いがあるのかもしれない。だが、目の前の子どもを肯定しないと、子どもは「ここにいないほうがいい」と受け止めてしまうのだ。





自己肯定感など自分で作ればいい、あるいは大きくなれば友だちや周囲から得られるものではないかと思っていた。ところが彼らに言わせればそうではない。どんなにいい大学に入ろうがいい会社に入ろうが、それはあくまでも後天的に培われた肯定感であり、ベースとなる肯定感の上に蓄積されていくもの。だがベースがないので、どんなに後天的に蓄積しようとしても砂上の楼閣になってしまうのだそうだ。





自己肯定感は二層でできているということだ。そして大事なのはベースの肯定感。





「自分は生きていていい」「ここにいていい」という生きる上でもっとも根本的な肯定感がいかに大切か。そしてそれは子どものころに培われないといけないものなのだと彼らは言う。



 



 



■発達障害や精神疾患と関係があるのか





ひきこもりの多くは発達障害だと誤解している人たちが多い。基本的には関係はない。精神疾患があるとしても、それが一次的なものか二次的なものかはわからない。私が話を聞かせてもらってきた人たちの中には、発達障害だと診断された人もいるが、ずっと自身に違和感を覚えていたり生きづらかったりしたことで受診した人が大半だ。発達障害だからひきこもった、ということではなく、むしろ発達障害だったのに適切な生育法をとってもらえなかったのだ。そして彼らとは、話していてこちらが違和感を覚えたことはない。自分が発達障害だとわかった人たちは、きちんと「自分の取説(取扱説明書)を示してくれる。だからつきあいやすい。





私自身も、今の時代に子どもであれば学習障害、発達障害と診断されてもおかしくないような気はするし、周囲にもなんだか生きづらいと思って病院に行ったら発達障害だと診断された「普通の大人」は少なくない。





だからひきこもり=発達障害ではないのだ。ひきこもりに関しては、このように誤解が多い。





逆に言えば、何かきっかけがあって、相談もできず、社会的に孤立してしまったら、誰でも「ひきこもり」当事者になる可能性があるということだ。いくつからひきこもりになる、という年齢も関係ないと思う。彼らと自分との間に特別な違いはないと思っておいたほうがいい。

 



 



【連載記事】

【ひきこもる人たち Vol.01】中高年ひきこもり61.3万人の衝撃…

【ひきこもる人たち Vol.02】「ひきこもり」はいまの時代特有の現象?


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