■貧乏ゆすりはフラストレーションを解消する「固着反応」
隣の足元からガタガタガタガタと振動が聞こえ、気になって仕方がない。相手の足元の振動が気になり、食卓の雰囲気が台無しになる。このように、近くにいる人の「貧乏ゆすり」に不快感を覚える方は少なくないものです。
では、そもそもなぜ人は「貧乏ゆすり」をするのでしょう? 貧乏ゆすりは、フラストレーションを楽にするために繰り返す無意味な反応の一つ。これを「固着反応」と呼びます。固着反応には、他にも爪を噛む、頭をかきむしる、髪の毛を指で回す、指でテーブルを叩く、というようにたくさんの行動があります。無意識にやっているため、本人はその行動の影響に気づいていません。そのため周りが不快になり、イライラを募らせてしまうのです。
「貧乏ゆすりをする人って、生活音が大きい気がするよね。ため息をつきながらうろうろ歩き回ったり、ドアを閉める音が大きかったり……」といった不満の声もよく聞きます。これは、貧乏ゆすりと同じような固着反応をいくつもとっているため、音を発する機会が多くなったり、目障りな行動を繰り返してしまうせいでしょう。
■貧乏ゆすりを“なくす”ための二つの方法
貧乏ゆすりをはじめとする固着反応は、病的なものではありません。むしろ、自他を傷つけることなく、健康的な手段でフラストレーションを解消していると言えます。とはいえ、スマートな行動ではありませんし、周りに不快感を与えてしまいます。したがって、気づいたらやめるようにすることが大切です。
では、貧乏ゆすりを頻繁にしてしまうのはなぜでしょう?
一つ目の理由として、フラストレーションをためやすい考え方をしていること。二つ目の理由として、固着反応によるフラストレーションの解消に頼りすぎていることが考えられます。したがって、フラストレーションをためない考え方を取り入れ、解消法のバリエーションを広げることが重要になります。
【解消法1】フラストレーションをためない考え方を取り入れる
たとえば、仕事がはかどらなくてイライラした時、「この程度の仕事ができないようではだめだ」と焦ったり、「なぜあの人みたいに、スムーズにこなせないのか」と他人と比べて落ち込んだり、「こんなに大変なのに、周りの人はなぜ手伝ってくれないの?」と周囲への苛立ちを募らせたりする。こうした考え方は、フラストレーションをためやすい考え方です。
こうした考え方をなくすには、これらの考えが一瞬、頭に浮かんだときに、別の合理的な考え方に修正していくことです。「仕事はうまくいかない時もある。続けているうちに上達するから大丈夫」と大らかな考え方をインプットする。「人それぞれに仕事の進め方は異なる。他人と比べても意味はない」と自分に語りかける。「手が空いていたら、少し手伝ってもらえますか?」と周囲に協力を依頼する。このように、合理的な考え方に修正して行動すれば、フラストレーションをためにくくなります。
【解消法2】解消法のバリエーションを広げる
固着反応での解消を始めたときに、たとえば、いったん席を離れてドリンクを一杯飲むなど、それ以外の解消法に切り替えてみましょう。特に柑橘系のドリンクには、疲労回復とリフレッシュ効果があるのでお勧めです。また、深呼吸をすると副交感神経が優位になってリラックスできます。ストレッチをすると血行が良くなり、体のコリを和らげることができます。
このように、解消法のバリエーションを広げると、固着反応に頼らず上手に解消できるようになります。
■周りの人が気づかせ、サポートしていくことが大事
とはいえ、これらの解消法を本人のみの努力で行うのは難しいもの。そこで、周囲の人のサポートが重要になります。貧乏ゆすりが気になったら指摘し、フラストレーションをためない考え方や解消法のバリエーションを提案していきましょう。
いずれにしても、伝え方がとても大切です。「貧乏ゆすり、やめてよ!」と攻撃的に言われると、相手は傷つきます。「貧乏ゆすりしてるよ」とやさしく伝え、考え方や解消法をやさしく提案をすると、相手はその意見を取り入れやすくなります。
「無くて七癖」と言われるように、誰もが思いがけない癖によって、他人に不快感を与えてしまうものです。ぜひ、「お互い様」の精神で相手が受け入れやすい伝え方を工夫しながら、上手にサポートしあっていきましょう。