■HSCの特性とは? 話題の本が示す23のチェックリスト
最近、HSCという言葉をよく耳にしませんか? HSCとは「ハイリー・センシティブ・チャイルド」の略語で、「人一倍敏感な子」と訳されます。HSCには、物音や異臭、痛みなどを人よりも強く感じやすい、とても繊細で人の気持ちや状況を敏感に感じやすい、喜怒哀楽の感情を強く感じやすく、物事を深く考えやすい、といった特性があります。
HSCという概念を広めた臨床心理学者エレイン・N・アーロンの著書『ひといちばい敏感な子』(明橋大二訳、1万年堂出版、2015年)では、HSCの特性を次の23のチェックリストにまとめています。13個以上当てはまると、HSCの可能性が高いとされています。
- すぐにびっくりする
- 服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
- 驚かされるのが苦手である
- しつけは、強い罰よりも、優しい注意のほうが効果がある
- 親の心を読む
- 年齢の割りに難しい言葉を使う
- いつもと違う臭いに気づく
- ユーモアのセンスがある
- 直感力に優れている
- 興奮したあとはなかなか寝つけない
- 大きな変化にうまく適応できない
- たくさんのことを質問する
- 服がぬれたり、砂がついたりすると、着替えたがる
- 完璧主義である
- 誰かがつらい思いをしていることに気づく
- 静かに遊ぶのを好む
- 考えさせられる深い質問をする
- 痛みに敏感である
- うるさい場所を嫌がる
- 細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気づく
- 石橋をたたいて渡る
- 人前で発表する時には、知っている人だけのほうがうまくいく
- 物事を深く考える
■HSCは育てにくいけど、「感受性」という才能を授かった子
HSCは病気や障害ではなく、その子が持つ特性です。多くの研究によると子どもの15~20%、おおよそ5人に1人の子がHSCであるとされています。HSCは、学校生活や他人とのかかわりの中ではとても緊張したり、不快な思いを抱きやすく、ストレスを感じることが多くなります。
そのため、HSCは一般的に「育てにくい子」と言われます。ちょっとした環境の変化も敏感に感じて嫌がるため、親は子どもの反応を常に気にし、子育てに疲れを感じます。しかし、HSCは言いかえれば「感受性の強い子」です。独特のアンテナで見るもの聞くものからインスピレーションを受け、とてもユニークなアイディアを考案しているのかもしれません。
これからの世の中では、既成概念を打ち破る発想で新しいムーブメントを起こす人が必要とされます。そしてHSCには、その潜在能力を持つ子がたくさんいるものと思います。したがって「うちの子はHSCかも?」と感じたら、まずありのままの子どもの反応をしっかり受け止めること。そして、子どもに寄り添いながら、どのような思いからその反応を起こしているのかを理解することです。気持ちをわかってくれている親は、子どもにとっての「安全基地」です。そうした親をベースにして、子どもは大きく育っていきます。
■HSPは才能豊かな人。個性を活かせる生き方を目指していこう
ところで、ハイリー・センシティブな人は子どもだけに限りません。同じような特性を持つ大人をHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン、人一倍敏感な大人)と呼びます。実は私たち自身もHSPであるのかもしれませんし、私たちの周辺にもHSPはたくさんいるのかもしれません。五感による刺激を強く感じて、感情が揺さぶられやすい。他人の気持ちがわかりすぎてしまって、つらい。物事を深読みし、考えすぎてしまって疲れる。こういった特性に心当たりがある場合、先の23項目のリストでチェックしてみましょう。
そして、自分がHSPなのかもしれないと感じたら、今までの軌跡を振り返ってみましょう。気持ちを理解してもらえず、つらかったことはありませんか? 周りと合わせられず、孤独を感じたことはありませんか? 感じすぎたり、考えすぎたりすることで生きにくさを感じたことはありませんか? もしそうなら、自分を否定することはありません。他人より一段、感受性の強い能力を授かったことに、まず誇りを持ちましょう。そして、自分の能力をどのように活かしてきたか、振り返ってみましょう。ある人は、違和感をすばやく察知する能力から、危険を回避できたのかもしれません。またある人は、人の気持ちを汲み取る能力から、たくさんの人を支えてきたのかもしれません。
HSC、HSPの特性を持ちながら生きることは、たしかに大変なことです。しかし、個性的な活動ができ、他人をサポートできるといった得難い才能を持つ人でもあります。ぜひ、その特性を肯定し、個性を活かせる生き方を目指してみてください。