統計サイト「都道府県別統計とランキングで見る県民性」を運営し、1000以上の都道府県別ランキングを調査するなかから見えてきた「47都道府県のこぼれ話」。第二回は食べ物にまつわるお話です。
■「関西人は納豆を食べない」は本当か
交通網が整備され、マスコミの情報も瞬時に行き渡る現代。北海道から沖縄まで全国の人々が同じような生活を送っていますが、こと食べものに関しては、地域性が色濃く残っています。食の嗜好は一朝一夕に変わるものではありません。テレビやネットから毎日のように新しいグルメ情報が発信されても、それは同じです。好き嫌いの大半は親から受け継いでいるのではないでしょうか。
食べもの×地域にまつわる話でひときわ有名なのが「関西人は納豆を食べない」説。実際、納豆の消費量はくっきり東西で分かれていて、関西をはじめ西日本各地で消費量の少なさが目立ちます。このように「東西対立」の形になる食べものは少なくありません。
■ラーメンは「東日本の食べもの」
意外に思われるかもしれませんが、ラーメンもその一つ。ラーメンの外食費用を比較すると、多いのは圧倒的に東日本で、“国民食”とも言われるラーメンが実は東日本の食べものであることが分かります。博多ラーメンで有名な福岡県でさえ偏差値47.61で23位です。そういえば佐賀県出身の筆者も、地元ではラーメン屋よりもうどん屋に行く機会の方が多かったように思います。
そのほか、あまり知られていないのが肉と野菜。生鮮肉消費量と生鮮野菜消費量を比べると、肉は西日本、野菜は東日本で消費量が多くなっています。まさに「肉食系の西日本」「草食系の東日本」です。西日本で肉の消費量が多い理由は諸説ありますが、農耕用の牛を食肉用に転用していた、との説が有力です。一方、東日本では農耕用に馬を使っていたため、「食べられる部分が少ない」などの理由で食肉の習慣が根付かなかったようです。
■都会人は食べるけど、地方在住者は食べない野菜
ところで、食べものの分布形式は東西対立だけではなく、「都会と地方」の場合もあります。地方より都会の方が消費量の多いものを以下に挙げてみましょう。
【野菜類】
ピーマン
レタス
じゃがいも
トマト
【その他】
パン
ジャム
紅茶
バター
いずれも、明治維新後日本に普及しています。比較的新しい時代に都会から地方へ広まったため、いまだ消費量に差があるのでしょう。
これらのことから、
東西対立型=明治以前の食生活の影響を受ける食べもの
都市地方対立型=明治以降の新しい文化の影響を受けた食べもの
というルールが導き出せそうです。
■「しょう油、砂糖、油控えめ」が地方で流行る?
このルールをベースに調味料の分布を調べてみると、実に興味深い結果となりました。
【東日本で多く使われる調味料】
味噌
食塩
【地方で多く使われる調味料】
しょう油
砂糖
食用油
先ほどのルールに当てはめると、東日本で食塩や味噌の消費量が多い理由は、漬物をはじめとする保存食の需要が寒い地域で増えたためと思われます。しょう油や砂糖、食用油が地方で消費されているということは、都会でこれらの消費量が少ないということ。つまり現在、しょう油や砂糖、油を控えめにする食習慣が新しい文化として都市から地方に広がりつつあると言えそうです。このように食の分布を見ると、食文化の移り変わりを知ったり、予測したりできるわけです。
※情報は2018年7月4日現在のものです