世界中で愛される「紅茶」は、その多彩な種類が魅力です。
しかし、自分に合った紅茶を選ぶのは、種類が多すぎて迷ってしまうことも。
また、選んだ茶葉にぴったりの飲み方や、相性のよい食べ物についても気になるところです。
そこで今回の記事では、「代表的な紅茶の種類」「茶葉ごとの特徴や相性のよい食べ物」について、管理栄養士が詳しく解説していきます。
紅茶の種類がちがえば、色や香りや風味も異なる!
紅茶には、カテキン、テアフラビン、テアルビジンなどのポリフェノールが含まれています。
ポリフェノールの量やバランスは、茶葉の育った環境や、収穫時期、茶葉の発酵の進み具合などによって変わります。
紅茶の種類ごとに異なる個性がある理由のひとつには、ポリフェノールがかかわっていることが挙げられるでしょう。
生産地ごとの紅茶の種類と特徴
紅茶の種類といえば、「ダージリン」「アッサム」などを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
これらの銘柄は、それぞれの茶葉の生産地に由来しています。
紅茶は世界30か国以上で作られており、生産地としてとくに有名なのが、インド、スリランカ、中国です。
ここから、各生産地の代表的な紅茶の種類を紹介し、それぞれの茶葉の特徴やおすすめの飲み方についても一覧にして解説していきます。
インドの紅茶
インドは、世界最大の紅茶生産国です。
北東部ではダージリンやアッサム、南部ではニルギリなどといった銘柄の紅茶が栽培されています。
ダージリン
ダージリンと呼ばれる地域は、西ベンガル州の最北端、標高の高い山岳地です。ダージリンは、マスカットのような甘い香りが「紅茶のシャンパン」と表現されることもある、世界3大紅茶のひとつです。
ダージリンには年に4回の茶摘み時期があり、時期によって以下の4種類にわけられます。
●ファーストフラッシュ(茶摘み時期:3月初旬~4月)
その年に初めて摘まれるダージリンの茶葉(一番茶)を「ファーストフラッシュ」と呼びます。
・香り…マスカットや青りんごのような香り
・味…爽やかな渋み
・紅茶(抽出液)の色…淡い黄色から淡いオレンジ色
・おすすめの飲み方…ストレート
●セカンドフラッシュ(茶摘み時期:5月~6月下旬)
ファーストフラッシュを摘んだあとに成長した茶葉を摘んだもの(二番茶)が「セカンドフレッシュ」です。
セカンドフラッシュは、ほかの季節のダージリンと比べて、香りや味、色のバランスがとてもよいといわれています。
・香り…熟したマスカットのような香り
・味…強い渋み
・紅茶の色…明るいオレンジ色
・おすすめの飲み方…ストレート
●モンスーンフラッシュ(茶摘み時期:8月~9月)
モンスーンや雨季に摘まれる「モンスーンフラッシュ」。ほかの時期のダージリンより個性が弱く、質もよくないため、ブレンド用の茶葉とされることが多いようです。
・香り…紅茶らしい、落ち着いた香り
・味…コクと濃厚さを感じる渋み
・紅茶の色…黒みがかった赤色
・おすすめの飲み方…ミルク
●オータムナル(茶摘み時期:10月~11月)
その年最後に摘まれるダージリンを「オータムナル」と呼びます。ほかの季節の茶葉よりも個性が強く、ミルクと合わせてもおいしくいただけます。
・香り…熟したフルーツや、柑橘系のドライフルーツのような甘い香り
・味…コクと刺激のある渋み
・紅茶の色…赤みがかったオレンジ色
・おすすめの飲み方…ストレート、ミルク
アッサム
インド北東部・アッサム州の広大な平野で生産される紅茶がアッサムです。アッサムは、コクのある甘みを含む独特な風味が魅力。
インドで日常的に飲まれているスパイスミルクティー「チャイ」に使われることも多い茶葉です。
アッサムにはダージリンと同じように、季節ごとの分類(ファーストフラッシュ、セカンドフラッシュ、モンスーンフラッシュ、オータムナル)もあります。
また同じアッサムでも、茶葉のグレード(大きさ)や製法によって、風味や色にちがいがあるのも特徴のひとつ。
ここでは、3種類のアッサムについて紹介します。なお、グレードについては、この記事でのちほどくわしく解説します。
●アッサムOP(アッサムオレンジ・ペコー)
OP(オレンジ・ペコー)とは、比較的大きいサイズの茶葉を指します。大きめの茶葉で淹れたアッサムは、まろやかな味わいが魅力的です。
・香り…おだやかな香り
・味…濃厚で甘みを感じる
・紅茶の色…透明感のある深い赤色
・おすすめの飲み方…ストレート、ミルク
●アッサムBOP(アッサムブロークン・オレンジ・ペコー)
BOP(ブロークン・オレンジ・ペコー)とは、OPより細かいサイズの茶葉のことです。
・香り…スモーキーな香り
・味…コクと重みを感じる
・紅茶の色…赤褐色
・おすすめの飲み方…ストレート、ミルク
●アッサムCTC(アッサムシーティーシー)
CTCとは、グレード(葉の大きさ)ではなく製造方法をあらわしたものです。
CTC機を使って茶葉を細かい粉末状に加工し、大量生産をしやすくした製法をCTCと呼びます。
一方で、先に紹介したOPやBOPなどに分類される茶葉は、いずれも古くから行われてきた製造方法(オーソドックス製法)で作られます。オーソドックス製法は、CTC製法よりも人の手が加わっているのが特徴です。
現在、ほとんどのアッサムがCTC製法で製造され、ティーバックに利用されています。
・香り…香りは弱め
・味…渋みは弱い
・紅茶の色…暗めの赤褐色
・おすすめの飲み方…ミルク
ニルギリ
ニルギリは、南インドに位置します。ニルギリの魅力は、万人うけする飲みやすさです。
のちほど紹介するスリランカの紅茶(セイロンティー)と似ているともいわれています。
・香り…すっきりとした穏やかな香り
・味…渋みはほとんどなく、飲みやすい
・紅茶の色…透明度が高い、あざやかな赤色
・おすすめの飲み方…ストレート、ミルク、レモン、アイス
スリランカの紅茶(セイロンティー)
インド洋の島国であるスリランカは、かつてセイロン島と呼ばれていました。
そのため、スリランカの紅茶は「セイロンティー」と呼ばれることもあります。
茶園の標高に差があり、茶葉の育つ環境が大きく異なるスリランカでは、個性豊かなセイロンティーが生まれています。
ウバ
ウバは比較的標高が高い地域で作られている紅茶です。世界3大紅茶のひとつとして知られています。
・香り…ウバ特有の香り(バラやフルーツに似た甘い香り)
・味…渋みが強い
・紅茶の色…明るい赤色(紅色)
・おすすめの飲み方…ストレート、ミルク
ヌワラエリア
スリランカティーの中で、もっとも標高の高い茶園で作られているのが、ヌワラエリアです。
涼しい環境で育つヌワラエリアは、フレッシュな風味と透き通った色が印象的です。
・香り…草花のような優しい香り
・味…フレッシュな渋み
・紅茶の色…淡いオレンジ色
・おすすめの飲み方…ストレート、ミルク
ディンブラ
ディンブラは、中~高程度の標高の茶園で作られている紅茶です。
独特な風味は持たないものの、香り・味・色のバランスがよく、クセがないのが魅力だといえるでしょう。
・香り…上品な香り
・味…渋みは強くなく、軽やかな味わい
・紅茶の色…赤褐色から赤みのあるオレンジ色
・おすすめの飲み方…ストレート、ミルク、レモン、アイス
中国の紅茶
バラエティー豊かなお茶を世界中に輸出している中国。中国茶だけではなく、実は紅茶の産地としても有名です。
ここでは、個性が際立つ中国の紅茶を2種類紹介します。
キームン(キーマン)
ダージリン、ウバと並んで世界3大紅茶として知られているのが、中国の祁門(キームン)県で生産されているキームンです。
キーマンと呼ばれることもあります。
茶葉が針金のように細長いかたちをしており、甘い香りが魅力的です。
・香り…華やかでオリエンタルな香り、フルーティーさも感じる
・味…渋みは弱く、上品でマイルド
・紅茶の色…深い赤色
・おすすめの飲み方…ストレート、ミルク、レモン、アイス
雲南紅茶
プーアール茶(中国茶)の産地でも有名な雲南省で生産されている紅茶が雲南紅茶です。
スパイシーな独特な風味が魅力です。
・香り…スパイシーな香り
・味…渋みは弱く、ほのかに甘い
・紅茶の色…赤褐色からオレンジ色
・おすすめの飲み方…ストレート、ミルク
そのほかの紅茶の種類
ここまで紹介したように、紅茶の茶葉の名前はおもに生産地に由来しています。
しかし、ほかにも「アールグレイ」「フレーバードティー」「ハーブティー」などと呼ばれる紅茶があります。
これらはいったいどのような種類の紅茶なのでしょうか。
特徴やおすすめの飲み方などとあわせてくわしく解説します。
茶葉に香りをつけた紅茶「フレーバードティー」
フレーバードティーとは、花やフルーツ、スパイスなどの香りを茶葉につけた紅茶のことです。
茶葉の種類に決まりはなく、ダージリンをベースにしたもの、キームンをベースにしたものなど、多種多様なフレーバードティーがあります。
茶葉と同じく、香り付けに使う花やフルーツ、スパイスの種類にも決まりはありません。
たとえば、アプリコットやオレンジショコラ、ベルガモットやバラの香りなど、自由に楽しまれています。
アールグレイ
アールグレイとは、特定の茶葉の名前ではなく、フレーバードティーの種類のひとつです。
茶葉にベルガモット(橘類のフルーツ)の香りをつけたフレーバードティーをアールグレイといいます。
アールグレイは、イギリス伝統のフレーバードティーとして親しまれてきました。今では、さまざまな茶葉をベースにしたアールグレイが世界中で飲まれています。
・香り…爽やかなベルガモット(柑橘)の香り
・味、紅茶の色、おすすめの飲み方…ベースの茶葉によって異なる
ラプサンスーチョン
ラプサンスーチョンとは、中国福建省の武夷山(ぶいさん)で作られた正山小種(ラプサンスーチョン)紅茶に、燃やした松の煙を使って香りづけしたものです。
ラプサンスーチョン特有のオリエンタルな香りが多くの西洋人から人気を集め、アールグレイが生まれるきっかけとなったともいわれています。
・香り…スモーキーでクセのある香り
・味…渋みは少なく、甘みがある
・紅茶の色…深い赤色
・おすすめの飲み方…ストレート、ミルク
複数の茶葉を組み合わせた紅茶「ブレンドティー」
生産地や茶摘みの季節などを問わず、2種類以上のちがう茶葉を組み合わせて飲まれる紅茶がブレンドティーです。
ブレンドティーは、飲むシーンや、飲み方、コンセプトなどをイメージして作られています。
ほとんどの紅茶メーカーでオリジナルのブレンドティーが販売されているので、気分や好みにあわせて、お気に入りのものを探してみるのはいかがでしょうか。
イングリッシュブレックファーストティー
代表的なブレンドティーのひとつに、イングリッシュブレックファーストティーがあります。
ボリュームのあるイギリスの朝食と合うようにブレンドされており、ミルクティーにして飲むとおいしく感じられるよう工夫されています。
茶葉の種類や量は紅茶メーカーによってさまざまですが、アッサムやセイロンティーを使うのが定番のようです。
ハーブをブレンドした紅茶「ハーブティー」
ハーブティーは、その名前のとおり、茶葉とハーブを組み合わせた紅茶です。
見た目や香りが華やかなハーブティーは、リフレッシュしたいときにもぴったりです。
ハーブティーに使われる代表的なハーブには、ローズヒップ、ハイビスカス、ペパーミント、エルダーフラワーなどがあります。
ノンカフェインで人気の高い「ルイボスティー」
カフェインの入っていない紅茶として注目されているルイボスティー。
厳密にいうとルイボスティーは紅茶ではありません。南アフリカで育つルイボスというハーブから作られる飲み物です。
紅茶によく似た香りや味、色をしているため、紅茶に代わる飲み物として親しまれています。
茶葉のサイズによる紅茶の種類のちがい
紅茶の茶葉には「グレード」と呼ばれる分類があります。
グレードというものの、これは茶葉の品質の優劣ではなく、サイズのちがいをあらわしたものです。
現在、オーソドックス製法で作られる紅茶では、おもに5つのグレードが使われています。
・OP(オレンジ・ペコー)
・BOP(ブロークン・オレンジ・ペコー)
・BOPF(ブロークン・オレンジ・ペコー・ファニングス)
・F(ファニングス)
・D(ダスト)
上記の5つです。
OP、BOP、BOPF、F、Dの順に茶葉のサイズが小さくなり、Dに分類される茶葉は、おもにティーバッグ用に利用されます。
茶葉のサイズが大きいほど抽出されにくいため、紅茶を淹れるときの蒸らし時間は長くとるとよいでしょう。
紅茶の種類によって相性のよい食べ物がちがう?おすすめの組み合わせ
ここまでさまざまな種類の紅茶を紹介してきました。個性あふれる紅茶には、それぞれ相性のよい食べ物があります。
紅茶のタンニンには、食べ物の脂肪分を分解し、口の中をサッパリとさせる効果があると言われています。
そのため、渋みの強い(タンニンの多い)紅茶は、バターやクリームをたっぷり使ったお菓子との相性がよいです。
反対に、あっさりとした食べ物には、ニルギリやセイロンティーなどのクセの少ない紅茶もよく合うでしょう。
ここから具体的に、紅茶と食べ物のおすすめの組み合わせをいくつか紹介します。
ダージリン×チーズ
チーズの濃厚な味わいには、渋みの強いダージリンがぴったり。そのほかにも、ウバやヌワラエリアともよく合います。
ミルクティーにするのがおすすめです。
アッサム×焼菓子
クッキーやショートブレッドなどの焼菓子は、基本的にどの紅茶とも相性がよいといえるでしょう。
中でもおすすめなのが、濃厚な味わいのアッサムです。そのほか、中国の紅茶・キームンも焼菓子とよく合います。
ニルギリ×サンドイッチ
昼食やアフタヌーンティーの定番であるサンドイッチ。
紅茶を合わせるなら、渋みのほどよいニルギリがおすすめです。ニルギリのほか、ディンブラもサンドイッチとの相性がよい紅茶です。
ダージリン(ファーストフラッシュ)×和菓子
緑茶のような印象が強いファーストフラッシュのダージリンは、大福やおはぎなどの和菓子との相性バツグンです。
和菓子の濃厚な甘みとダージリンの爽やかな渋みがよく合います。
種類によるちがいを知って、紅茶をもっと楽しもう
今回の記事では、「代表的な紅茶の種類」「茶葉ごとの特徴や相性のよい食べ物」について、管理栄養士が詳しく解説しました。
多すぎて悩んでしまう紅茶の種類ですが、それぞれのちがいを知れば、もっと紅茶の世界を楽しめるはず。
これから紅茶を選ぶときには、今回紹介した種類のちがいや、おすすめの飲み方、食べ物との組み合わせなどを、ぜひ参考にしてみてくださいね。
※参照:日本紅茶協会 編,2022年「紅茶の大事典」成美堂出版,磯淵猛,2016年「基礎から学ぶ紅茶のすべて」誠文堂新光社