都内でもワンランク上のグルメが集まる街、広尾。その街の中心、東京メトロ・広尾駅すぐそばの好立地に構える「四川料理・薬膳火鍋 花椒庭 広尾本店」も、芸能人や著名人が多く訪れることでよく知られる実力店だ。店名が示す通り薬膳火鍋が看板メニューの同店だが、これから熱さを増す時季に向けて、あえて”火鍋なし”という新コースの提供をスタートした。今回は実際に同店を訪ねて本コースを実食。ここでは料理長のこだわりを交えながら、その感想を述べていこう。
中華料理全般に精通する熟練料理人の技術と経験が投入された2つの新コース

広尾駅1番出口から徒歩1分、広尾の中心部に面したビルの2階に構える「花椒庭(かしょうてい)」。四川料理の燃えるような熱さを連想させる赤い扉の奥には全30席ほどの隠れ家的空間が広がり、最大6人が利用できる個室を3室設けているところにも、プライバシーを大切にしたい著名人からの支持の厚い理由が伺える。

調理場の主は、15年以上にわたってこの店の味を守る白井猛総料理長。白井さんは都内の北京料理や上海料理の名店で経験を重ねたこの道30年以上の料理人で、四川料理のみならず中華料理全般に精通。花椒庭の名物といえば、客のほとんどが注文する四季火鍋なのだが、6月から提供を始めた2つの新コースには、白井さんの持つ高い経験値が反映された火鍋以外の人気メニューが惜しげもなく投入されている。

今回体験した『花椒庭ディナーコース』(税込7500円)は、前菜の「クラゲ頭の冷菜」に始まり、「お任せ牛肉の一品料理」「天使の海老と龍井茶の素揚げ」「点心の3種盛り」「豚ヒレ肉の黒酢酢豚」「花椒庭 麻婆豆腐」「ズワイ蟹の炒飯」の料理5品にデザートが付く計8品のフルコース。もう一方の『フカヒレ姿煮のディナーコース』(税込11000円)は、「豚ヒレ肉の黒酢酢豚」の代わりに「手びれフカヒレの姿煮」が加わる同じく計8品のコースとなっている。
クラゲ、天使の海老、小籠包、黒酢酢豚、贅沢感が止まらない!
食前にスパークリングワインを楽しみながら、最初に供されたのは「クラゲ頭の冷菜」だ。

珍味として知られるクラゲの頭を使った冷菜は開店当初からの人気メニューで、白井さんは「湯通しから保管まで長い時間をかけて食べやすい食感に仕上げています」とそのこだわりを語る。

まるで始まりからハイライトがやってきたかのような一皿を前に、まずはひとつ箸で掴んでみると、透明感あるビジュアルから涼しさが伝わってくる。そして酢醤油で最初の一口を食すと、その見た目に違わないぷるんとした舌触りがたまらない。あわせてコリコリと心地よい食感に素材の持つ滋味を感じる。

次に、その日の仕入れによって内容が変わる「お任せ牛肉の一品料理」に続いて供された「天使の海老と龍井茶の素揚げ」は、中国の高級緑茶である龍井茶(ろんじんちゃ)を料理の素材として使った一品だ。茶葉独特の風味をまとった天使の海老は皮まで丸ごと味わうことができ、適度な塩気は5年ものから20年ものまでを揃える紹興酒ともよく合う。



その後、「点心の3種盛り」に小籠包やフカヒレ餃子まで食べられるこのコースの充実度の高さを感じていると、次に「豚ヒレ肉の黒酢酢豚」が到着。
酢豚というと角切り肉が一般的だが、花椒庭の酢豚は短冊切りの肉を使っているところが特徴。高齢の常連客も多い土地柄に合わせて柔らかく食べられる形を追求した結果、このスタイルに行き着いたという。


そのこだわり通り、甘酢のベールをまとった肉はサクッと嚙み切れる柔らかさ。その上で、豚ヒレ肉を大ぶりの形で使っているので見た目に比べてあっさりとした味わいで、多彩な料理で構成されるコースの中で優しい存在感を示している。
四川料理の真骨頂・麻婆豆腐と黄金チャーハンの最強タッグで締め!
次はとうとうお待ちかねの「花椒庭 麻婆豆腐」だ。四川料理の代表格が放つ赤いビジュアルは、おそらく何を言わずとも見た目で読者の皆さんの食欲をグッと刺激するはず。そして「花椒のしびれと華やかな香りを楽しんでください」と白井さんに促されながら一口食すと、醤のコクと豆腐の甘みの間をすり抜けるかのように山椒のしびれがやってくる。

ああ、この味はご飯が欲しくなる…、と、そんなこちらの気持ちを察したかのように、締めの「ズワイ蟹の炒飯」が卓上に。黄金に輝くチャーハンは、崩してしまうのが惜しいような美しさだ。そして中央が溝になった皿を使っているのは、麻婆豆腐をかけて食べたいという人のニーズを叶えるためで、それぞれを単品で味わいながら、途中で麻婆チャーハンにすることも可能。最後にもそんなプラスワンの楽しみが待っている満足感のある内容だった。

コース全体を通じて感じたのは、顧客年齢層の高い広尾という土地柄に合わせて、どの料理にも「食べやすさ」の工夫がなされていたことだ。例えば、先ほどの黒酢酢豚のみならず、ほぼすべての料理で豚はヒレ肉を使い、味わいも食感も柔らかな料理を心がけているという。おそらくそこには白井総料理長の柔和な人柄が表れており、その優しさこそが広尾という街でこの店が長年愛されてきた要因なのだろう。
『花椒庭ディナーコース』『フカヒレ姿煮のディナーコース』は9月中旬まで提供の予定。夏は絶品中華で、冬は薬膳火鍋と季節で楽しみを変えて、ぜひ通いの店に加えたい一軒だ。
「四川料理・薬膳火鍋 花椒庭 広尾本店」
所在地:東京都港区南麻布5-15-25 六幸館2階
電話番号:050-5868-1312
営業時間:17:00~23:00
定休日:月曜、祝日