メディアアートとテクノロジーの体感拠点として東京都がJR有楽町駅前に開設した「SusHi Tech Square」では、東京2020開会式などで実際に使用された資産の展示や競技体験が楽しめる「TOKYO FORWARD TOKYO2020レガシー展」の第4期を開催中。10月26日には、来年2025年11月の東京 2025 デフリンピックの開幕を控えて注目が集まるデフ競技プレーヤーを迎え、「支える」をテーマにしたトークイベントが開催された。
デフ(Deaf)とは、英語で「耳がきこえない」を意味し、デフアスリートのための国際的な総合スポーツ競技大会〈デフリンピック〉では、補聴器などを外して全員が公平にきこえない立場で競技が行われる。今回のトークイベントには、同大会での活躍が期待されているデフテニスプレーヤーの菰方(こもかた)里菜選手、今年のパリパラリンピックにも出場した車いすテニスプレーヤーの眞田 卓選手、タレントの足立梨花さんが登壇した。
舞台やHANDSIGNのMV「僕が君の耳になる」でろう者役を演じた足立さんは、旦那さんが手話パフォーマーTATSUさんということもあり、手話イベントへも数多く出演している。またMVでの足立さんの手話指導者がデフリンピック2001年大会で優勝したバレーボール選手ということもあり、「東京で開催されることがとてもうれしい」と語った。
菰方里菜選手(右)は2023年の世界デフテニス選手権大会でシングルス、ダブルスともに優勝、2024年度全豪オープンレフテニス部門でもシングルスで優勝、ダブルスで準優勝をおさめたデフテニスのトップアスリート。「世界大会に初めて参加した際に、同じ障害を持った人がこんなにたくさんいるということを知り、そしてデフテニスを通じて世界の人と繋がることができるという魅力を感じた」と語った。ちなみに菰方選手の指を立てているポーズは打ったボール、サーブがラインの外側に出てしまったことを示すアウト、フォルトの競技サイン。トゥースではない。
2023年に全米オープンテニスで優勝を飾り、今年2024年はパリパラリンピックに出場した車いすテニスプレーヤーの眞田 卓選手。「センターコートで約15,000人の観客の前でプレーできたことは、すごくうれしい経験だった」と語った。そんな眞田選手が左手に装着しているのは「オンテナ」という音をからだで感じるユーザインタフェース。髪の毛や耳たぶ、えり元やそで口などに身につけることで、振動と光によって音の特徴をからだで感じることができるという。
オンテナを身につけた状態で菰方選手と眞田選手がボレーボレーに挑戦。ラケットでボールを打ち返すたびにトントントンと振動している様子が会場内の参加者にも伝わった。
「オンテナ」の展示コーナー。すごくスマートな形状ながら、ろう・難聴者がからだで音が感じられるスグレモノだ。
こちらは音声認識した内容を高精度な翻訳文章として透明ディスプレイに表示する「UCDisplay」。12ヶ国語に対応し、映画字幕のように相手の顔とテキスト字幕の両方が画面上に映し出されるので、これまでの翻訳サービスよりも自然な会話が可能になる。
今回のイベントには、東京2020大会マスコットのミライトワとソメイティも駆けつけ、会場を大いに沸かせた。
恥ずかしながら今回のイベントを取材するまで、4年に一度夏季と冬季に開催されるデフリンピックの存在を知らなかった筆者。しかしながらその歴史は古く、1924年にパリで開催されてから、なんと来年初めて日本で開催される東京大会でちょうど100周年を迎えるという。この記念すべき大会を、ぜひ生で観てみたいものだ。