“神のグラス”と呼ばれる至高の酒を象徴的に描く人気漫画『バーテンダー』。人間模様のドラマに加えて本格的なBARの世界を描いていることから、BAR業界に携わっている人からも非常に評価が高い作品です。2024年4月4日~6月20日にかけては、アニメ版も放送され話題を呼びました。(現在はAbemaで配信中)
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作中では、様々なカクテルが紹介されていますが、お酒初心者には馴染みのない名前のものも多数あります。この記事では、アニメ「バーテンダー 神のグラス」の各話で紹介されていた全カクテルのレシピや歴史、味の詳細を徹底解説。
よりアニメを楽しむためにも、BARでカクテルのオーダーに強くなるためにも、参考になると思いますよ!
※記事内ではカクテル紹介を行う性質上、一部ネタバレ要素が含まれますのでご注意ください。
カクテルの奥深さを楽しめる定番「ジントニック」
そのシンプルさと世界的な人気から"カクテルの定番"と呼ぶにふさわしい「ジントニック」。名前の通り、ジンとトニックウォーターを基本とする爽やかなカクテルです。アニメ内では「今、私が飲みたいと思っているカクテルを作ってみろ」と言われ、主人公の佐々倉が作った1杯です。
特徴は、ジンのボタニカルな風味とトニックウォーターのほのかな苦味が調和したスッキリとした味わい。ただ、ジンとトニックウォーターの比率や、使う種類によって風味は大きく変わります。シンプルなレシピながら無限のバリエーションが存在する、カクテルの奥深さを楽しめる1杯と言えますね!アニメ内で佐々倉は「暑くなってきたので、ビターズを少し垂らしてみました」と、夏用にさっぱりとしたアレンジを行っていました。
このカクテルの起源として有力なのは、ジンの本場として知られているイギリスの東インド会社のエピソードです。イギリス植民地時代、東インド会社の社員たちはマラリア対策のためにキニーネを含む"ジェスイットの粉"というものを摂取する必要があり、その苦味を和らげるために砂糖と炭酸水を加えて飲んだのですが、そこにさらにジンをミックスしたのが「ジントニック」の始まりとされています。
ちなみに、一部の「ジントニック」はブラックライトで幻想的に光らせることもできるのですが、これはキニーネの日光に反応して発光するという特性によるものです。国産のトニックウォーターには、通常キニーネは含まれていないので、ご自宅で作る際は注意してください。
世界中で愛されるクラシックカクテル「ジントニック」。その有名さから、BARで気軽に注文できるのも、このカクテルの良いところですよね!
スタンダードな「ジントニック」のレシピ&作り方
ドライジン:45ml
トニックウォーター:適量
カットライム:1/6個
1.氷を入れたタンブラーにジンを注ぎ、冷やしたトニックウォーターで満たして軽くステア
2.ライムを飾れば完成
本場ではフローズンスタイル!世界的文豪も愛した「ダイキリ」
「ダイキリ」は、19世紀末にキューバで暑さをしのぐために考案されたカクテル。ダイキリ鉱山で働く鉱山労働者たちが、特産のラム酒にライムと砂糖を入れて飲んでいたのを、アメリカ人技師ジェニングス・コックスが命名したのだそう。
レシピは簡単で、ラムとライムジュースと砂糖をシェイクしてグラスに注ぐだけ。ラムの豊かな風味とライムの酸味の絶妙なバランス、そこにほどよい甘さが加わった爽やかさが際立つ1杯です。
そんな「ダイキリ」は、基本的なフローズンカクテルとして扱われることもあるのだそう。これは本場キューバの「ダイキリ」がフローズンスタイルで提供されることが多く、レシピもシンプルなためです。暑い気候で楽しむ爽やかな1杯として、トロピカルカクテルの中でも特別な地位を持っていると言えるでしょう。
また「ダイキリ」は、文豪ヘミングウェイが愛したカクテルとしても知られています。彼はキューバのハバナのBARで「ダイキリ」を好んで飲んでいたのですが、糖尿病を患っていたため、砂糖の代わりにグレープフルーツ果汁を使い、ラムをダブルで入れた特製のフローズンスタイルの「ダイキリ」を注文していたことでも有名です。この「ダイキリ」は、今日では「パパ・ヘミングウェイ」や「パパ・ダイキリ」、「ヘミングウェイ・ダイキリ」や「ヘミングウェイ・スペシャル」と呼ばれています。
世界中で愛されるクラシックカクテル「ダイキリ」。エレガントさと爽やかさを兼ね備えた、シンプルで洗練された味わいを楽しんでみるのはいかがでしょうか?
スタンダードな「ダイキリ」のレシピ&作り方
ホワイトラム:45ml
ライムジュース:15ml
砂糖:小さじ1
1.材料をシェイク
2.カクテルグラスに注げば完成
桃を使った華やかなシーンにぴったりな1杯「ベリーニ」
「ベリーニ」は、主にプロセッコ(スパークリングワイン)と桃のピューレで作られるイタリアのカクテル。著名人が集い、ヘミングウェイや映画俳優オーソン・ウェルズがよく通ったことで知られるヴェネツィアの「ハリーズ・バー」で発明されたとされています。
カクテル名の由来は、ルネサンス期のイタリアの画家ジョヴァンニ・ベリーニ。1948年、ヴェネツィアで行われていた彼の展覧会の記念に、「ハリーズ・バー」の創業者でありバーテンダーであるジュゼッペ・チプリアーニが考案したのだそう。
特徴は、桃の甘さとプロセッコの爽やかさが絶妙にマッチした、軽やかでフルーティな味わい。特に暑い季節にぴったりのカクテルで、軽快な飲み口が人気です。
桃の旬である夏が終わった季節、たとえば冬には他のフルーツ(ラズベリーやストロベリーなど)を使ったレシピもあります。
また、現代の「ベリーニ」では、プロセッコ以外のスパークリングワインやシャンパンを使うこともあります。なので、本来のレシピに忠実なものは「クラシック・ベリーニ」と呼ばれることもあるんですよ!
軽やかでエレガントな味わいから、上品なカクテルとして認識されている「ベリーニ」。プロセッコやシャンパンを使用することから、特に祝祭や特別なシーンで好まれるカクテルです。
スタンダードな「ベリーニ」のレシピ&作り方
プロセッコ:80ml
白桃のピューレ:40ml
グレナデンシロップ:小さじ1
1.シャンパングラスに冷やした白桃のピューレと、グレナデンシロップを入れ軽くステア
2.よく冷やしたプロセッコを注ぎ、再びステア
3.ミントを添えれば完成
カクテルの世界で確固たる地位を誇る「マティーニ」
"カクテルの王様"として知られている「マティーニ」。その洗練された味わいとシンプルな構成から、多くのカクテル愛好家やバーテンダーに愛されており、クラシックカクテルの中でも特に高い地位を誇ります。
ジンとドライベルモットがベースで、ジンの芳香とベルモットのハーブが融合した、シンプルながらも複雑な風味が特徴。辛口でありながら、口当たりがなめらかで、クラシックカクテルの中でも非常にエレガントなものとされている1杯です。
また、このようなスタンダードな「マティーニ」だけでなく、ベルモットの量を減らした「ドライ・マティーニ」や、ジンの代わりにウォッカを使用した「ウォッカ・マティーニ」、映画「007」の主人公が愛飲した「ヴェスパー・マティーニ」など様々なバリエーションがあります。「マティーニ」は、自分好みの楽しみ方を追求できるカクテルの1つと言えるでしょう。
アニメの作中では「オランダスタイル」として、15年熟成のオランダジンを使用していました。
ちなみに、元イギリス首相のウィンストン・チャーチルは、「ドライ・マティーニ」の究極とも言える飲み方をしていたとされています。なんと彼は、「マティーニ」にベルモットを加えず、ただベルモットの瓶を見つめながら飲んだそう。ベルモットは瓶を見るだけで十分という、非常にドライなマティーニの好みを示す象徴的なエピソードですね!
洗練された大人の飲み物の代表格であり、その地位を確立している「マティーニ」。まずは飲んでおきたい、知っておきたい、そんな1杯です。
スタンダードな「マティーニ」のレシピ&作り方
ドライジン:45ml
ドライベルモット:15ml
1.ステアグラスに氷を入れ、材料を注ぎ冷たくなるまでステア
2.カクテルグラスに注ぎ、オリーブを添えれば完成
親友や再会した友人と飲みたい「オールドパル」
世界的に最も古く有名なカクテルの1つとされている「オールドパル」。"古い友人"や"懐かしい仲間"という意味を持つ1杯です。このカクテルは、パリの有名なバー「ハリーズ・ニューヨーク・バー」で最初に作られたとされています。実際、「オールドパル」が初めてカクテルブックに登場するのは、「ハリーズ・ニューヨーク・バー」のバーテンダーであるハリー・マッケルホーンの「ABC of Mixing Cocktails」の1929年刊の改訂版です。
アニメ内では、亡きマスターの月命日に来るお客様に提供し「美味い、これぞマスターの味だ」と唸らせた1杯ですね。
「オールドパル」の材料は、ライウイスキー、カンパリ、ドライベルモット。カンパリの苦味とドライベルモットのハーブ感、ライウイスキーのスパイシーさが絶妙に調和した、ビターでドライな味わいが特徴です。
「ブールヴァルディエ」と似たレシピですが、スイートベルモットではなくドライベルモットを使用する点が異なります。この小さな違いによって、同じベースのカクテルでありながら全く異なる味わいが生まれるのです。
「ブールヴァルディエ」は甘みを求める人向けのカクテルと言えるのに対し、「オールドパル」はドライでビターな味わいを好む人向けと言えます。より大人の味わいで、親しい友人と一緒に楽しむのにぴったりな1杯...「オールドパル」は、そんなクラシックカクテルです!
スタンダードな「オールドパル」のレシピ&作り方
ライウイスキー:20ml
カンパリ:20ml
ドライベルモット:20ml
1.材料をミキシンググラスに入れ、氷を加えてステア
2.カクテルグラスに注げば完成
圧倒的にユニーク!カクテルの可能性を証明した「ブルショット」
「ブルショット」は、他の有名なカクテルとは異なる独自の魅力を持っているカクテル。「ブル(雄牛)ショット(1杯お酒)」という名前の通り、ウォッカをベースに、ビーフブイヨンを加えたユニークな1杯です。
味の調整には、塩や胡椒、ウスターソース、タバスコなどを使います。ウォッカのクリアで強いアルコール感に、ビーフブイヨンのコクと塩気が加わり、スパイシーな調味料がアクセントとなった、温かみのある味わいが特徴です。
アニメ内では「酔いたいけど、お酒は飲みたくない」という気難しいお客様に提供し、感動させた1杯。
様々なスパイスや調味料を使うことで、自分だけの「オリジナルブルショット」を作ることもできます。まずは、ウスターソースやタバスコの量で、自分好みに合わせた味にカスタマイズするのがおすすめです。
誕生は、1953年にアメリカ・デトロイトのレストラン「コーカス・クラブ」の経営者グルーバー兄弟が作ったという説が有力です。ビーフブイヨンを使うことから、レストランでのアペリティフとして考案されたと考えられています。
欧米では食前酒としてポピュラーで、スープ代わりにもなっているんだそう。実際、ロックグラスではなく、スープカップで提供するレストランがあることも知られています。
お酒とスープを組み合わせた異色のカクテル。美味しくなるかはビーフブイヨンの味わい次第。そんな「ブルショット」は、味の調和が取れれば、どんな材料でもカクテルに使えるということを証明した1杯とも言えます。
ユニークなカクテルが飲みたい方は、ぜひ「ブルショット」を楽しんでみてください!
スタンダードな「ブルショット」のレシピ&作り方
ウォッカ:30ml
ビーフブイヨン:60ml
塩:少々(お好みで)
胡椒:少々(お好みで)
ウスターソース:数滴(お好みで)
タバスコ:数滴(お好みで)
1.ウォッカと冷ましたビーフブイヨンをシェイクする
2.氷を入れたロックグラスに注ぎ、お好みで調味料を加え、味を調えれば完成
まとめ
今回は、定番の「ジントニック」や王様の「マティーニ」、異色の「ブルショット」まで、様々なカクテルを紹介しました!
作中では、様々なノウハウと共に面白いお酒の知識が紹介されている『バーテンダー』。
アニメも面白いですが、原作である漫画『バーテンダー』ではより多くのカクテルが紹介されており、アニメよりも細かいノウハウや豆知識が紹介されています。アニメをみてカクテルやBARの世界により興味が湧いた方は、ぜひ漫画版の『バーテンダー』も手にとって読んでみてくださいね!
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