
こんにちは!旅とビールが大好き、ブラジル在住Ayumiです。

ブラジル最大の都市、サンパウロ。世界中からやってきた移民の街でもあり、世界最大規模の日系移民が集まる街でもあります。そんなサンパウロで、“沖縄をテーマにしたビール”が飲めるという噂を耳にしました。
その名も「Utiná Beer(ウチナービール)」。
どうしてブラジルに沖縄をテーマにしたビールが存在しているのか?その真相を探るべく、ウチナービールを立ち上げたAnderson Tokashikiさんに話を伺い、そして実際に飲んでみました!
立ち上げたのは、沖縄移民の3世

銀行員として勤務していましたが、2020年にサンパウロ市内に『Tokyo Station SP』という日本料理屋をオープンさせ、第二のキャリアにシフトしました。

ブラジルでは、自分たちのオリジナルビールを製造委託して店内で提供するレストランは良くあります。しかし『Tokyo Station SP』は、なぜ沖縄をテーマにしたビールを醸造することにしたのでしょうか?
そのきっかけは、夢に出てきた母方の“じっちゃん”の言葉でした。

それは、2024年1月のこと。祖父が突然夢に出てきて、Andersonさんにこういったそうです。
「ブラジルから出て旅をしなきゃならん」
そこで、Andersonさんが何処に行きたいのかと尋ねたところ、「Utiná(=ウチナー。沖縄の方言で“沖縄”を指す言葉)だ」と答えたそうです。
これがビールの名前をUtiná(ウチナー)にするきっかけとなりました。そして同時に、「目指すビールはブラジルのハートと日本の魂を持ったビールにしよう!」と決意。

そしてもう1つ、彼がビールを醸造する上で欠かせないと話すのは、彼が友人から教わった沖縄方言「チャーマジュン」。これは日本語で「いつも一緒」、ポルトガル語では「Sempre juntos」や「Tamu junto」と言います。この言葉が沖縄ソウルの本質を非常に良く表現していると感じ、ビール造りで大切にしているのだそう。
Andersonさんご自身は、まだ沖縄に行ったことがないそうですが、できるだけ近いうちに祖父母の故郷である沖縄に行ってみたいと話してくれました。
うちなーんちゅの子孫にとって、誇りになるように

そんな「ウチナービール」のビアスタイルは、世界中で最も飲み親しまれているスタイルの1つ、アメリカンラガー(※)です。
クラフトビールは通常、一般的な市販ビールよりも高額になりますが、Andersonさんは「シンプルでありながら、きちんと味にこだわって、たくさんの方に親しんでほしい」と、手が届きやすい価格で提供することにしました。
「ウチナービール」も、どんな料理やシチュエーションにもバッチリ合う、軽い飲みやすさが特徴。ラベルには沖縄の旗やシーサー、首里城など、沖縄らしさがデザインに織り込まれています。
※アメリカンラガーとは…
アメリカで生まれた下面発酵のビール。ピルスナーよりもホップ由来の苦みが少なく、爽やかで飲みやすいのが特徴。米やトウモロコシなどの副原料を使っているため、軽い口当たりやほのかな甘みを感じます。(例:『バドワイザー』『クアーズ』など)

今後の目標は、現在の品質と本質を維持したまま、ブラジル全土に販売を拡大させること。今年中には、新しいビアスタイルとして、沖縄を代表する花の1つであるハイビスカスと、ラズベリーを使ったフルーツビールの販売を計画しているそうです。名前は『Tropical Tchanpuru (トロピカル・チャンプルー)』の予定だとか。
夢を1つ1つ着実に叶えているAndersonさん。最後にこう話してくれました。
Andersonさん「できれば今後も販売を続けて、このビールが次世代のうちなーんちゅ(=沖縄の人)の子孫にとって、ブラジルに移住した自分たちの祖先とルーツに誇りをもてる後押しになればいいなと思っています。」
沖縄料理と一緒に飲んでみた in サンパウロ

「ウチナービール」は現在、サンパウロ市内で昔から続く日本料理レストラン数軒でも提供しています。せっかくなら沖縄料理と一緒に楽しみたい!と思い、サンパウロで最も古い老舗沖縄料理店「Deigo(デイゴ)」を訪問してきました。

「Deigo(デイゴ)」は、日系移民が多く移り住み、今でも日本や中国、韓国などアジア文化が色濃く残るサンパウロ市リベルダージ地区にあります。サンパウロ内の中でも、非常に有名な日本食料理屋です。
50年以上前に、沖縄ご出身のご夫婦が創業。50年目の節目に、お店は2代目の大将・Carlos賢一郎Tanakaさんにバトンタッチされました。

Carlosさんは、50周年の際に「唯一生き残っていた」常連さんの息子さんなんだそう!日本で鮨屋を始め、イタリアンなど多くの料理店で修業を重ねた実力派です。

入店して早速、Andersonさんの想いが詰まった「ウチナービール」をいただきます!パっと見て「あ、沖縄だ!」と感じるデザインと色使いがとっても良い。
実際飲んでみると、すごく飲みやすい!一口目からラガーならではの爽快さを感じます。喉越しがとてもよく、暑い気候のブラジルにピッタリ。ホップ由来の苦みも感じますが、残るような苦みはなくて爽やかさが勝ってます。これなら、ビールの苦みが得意じゃないという方でもチャレンジできそう。
そしてAndersonさんがおっしゃる通り、水のように飲めるサラサラ感はありつつも、丁寧に造りこまれた味がするんです。出会えてよかった、そんな風に思わせてくれるビール。ついついもう1杯、と追加してしまうそうなとことん飲みやすい爽快ラガーでした。

次は、料理を合わせて楽しんでみます。
「Deigo」はお刺身の鮮度が抜群なことで有名。そこで、まずは刺身盛り合わせを注文。刺身はマグロやヒラメ、ブリなどその日に入荷した新鮮なものばかり。主張控えめな「ウチナービール」との相性はバッチリです。

沖縄の伝統料理も合わせてみたい!と思い、大好きな「テビチ(豚足)煮込み」と「ゴーヤ天ぷら」も注文。濃い汁でしっかり煮込まれたテビチにも、海老の入ったボリューム満点なゴーヤ天ぷらにもしっかり合い、“沖縄のペアリング”を楽しめました。
地球の裏側に、飛行機もない時代に船で何か月もかけて移民した日本人の方の子孫が、祖父母の故郷を想って作った「ウチナービール」。いつか沖縄に逆輸入なんて日も来るかもしれませんね。ブラジルを訪れる機会があれば、ぜひ飲んでみてください。
